2005年7月15日(金)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪狙う与党

今国会提出見送ったが…

「法案は9割5分整った」


 都議選後の延長国会への改悪法案提出がねらわれていた教育基本法。七日、自民、公明両党の幹事長らによる与党協議会は「引き続き時間をかけて検討を」との結論を下し、今国会への提出は見送ったかたちになりました。しかし、同法改悪を“宿願”とする勢力は策動を緩めてはいません。教基法改悪の動きは、どこまで進んでいるのでしょうか。

 自公両党は今国会中も、実務者による「与党・教育基本法改正に関する検討会」(座長=保利耕輔元文相)を、ほぼ毎週開いてきました。文科省の担当者もまじえ、毎回約二時間、検討会発足から数えると六十回近くも議論を重ねてきたことになります。

 議員立法でなく政府提出法案とすることにこだわり、今年五月には文科省に法案の「仮要綱案」を提示させるところまでこぎつけました。

■憲法改悪にらみ

 「仮要綱案」は、昨年六月に与党が出した「中間報告」をベースにした十八条だて。

 ▽現行法で「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」ことをうたった前文を、憲法改悪の動向もにらんで全面的に書き換える。

 ▽「教育の目標」に「郷土と国を愛し(または「大切にし」)、国際社会の平和と発展に寄与する態度の涵養(かんよう)」を盛り込む。

 ▽現行法が「教育は、不当な支配に服することなく」と定めていることが教育行政を妨げているとの認識から、この部分を改める。

 などが主な内容です。

 公明党は、教育基本法を改悪することでは自民党と合意しています。ただ、愛国心を盛り込むことには「昔の軍国主義を想起する人がたくさんいることに配慮しなければならない」(斉藤鉄夫衆院議員)と難色を示しています。そのため、「国を愛する心」や、前文で憲法とのかかわりを明記した部分、宗教教育についてなど、「中間報告」で「さらに検討を要する」とされていた論点は、いまだ決着しておらず、「仮要綱案」でも両論併記となっています。

■右派議連も決議

 ほかにも、「普通教育と義務教育はどう違うのか」「国と地方の教育財政の分担をどう規定するか」など、検討会の議論は拡散。七日の与党協議会には論点山積みのまま報告されました。そのため、執行部からは「今後も精力的に議論を詰めてもらいたい」(自民・武部勤幹事長)「あまりそそくさとやらないで、時間をかけて検討してもらいたい」(同・中川秀直国対委員長)との意見がつきました。今国会での提出はひとまず見送ろうとの判断とみられています。

 しかし、教基法の改悪を求める勢力はあきらめていません。六月二十二日には、自民、民主の二百人を超える衆参国会議員でつくる日本会議国会議員懇談会が「政府は教育基本法改正法案の一日も早い国会提出を」との決議をあげました。

 自民党のある検討会メンバーは「文科省の『仮要綱案』は、法案の体裁としては九割五分整っている。よくここまで持ってきたものだ」とのべました。愛国心に“抵抗”している公明党との協議をここまで進めてきたことへの感慨です。検討会座長の保利氏は七日、「非常に難しい問題に入るので、上への根回し的な作業も必要になる」と発言。現場レベルでの協議から両党の執行部を巻き込むことで、両論併記となっている部分の決着を図っていきたい考えです。(坂井希)

▼教育基本法をめぐる最近の動き

03年3月中央教育審議会が教育基本法見直しを答申
5月「与党・教育基本法に関する協議会」発足
6月協議会のもとに実務者による検討会を設置
04年1月協議会が「教育基本法改正に関する協議会」に名称変更
6月検討会がまとめた「中間報告」を協議会が了承
9月協議会の指示で文科省が法案の準備作業を開始
05年3月都内の集会で下村博文文科政務官が「会期末になっても提出したい」と発言(2日)。検討会が文科省に法案の草案作成を指示(同)
5月検討会に文科省が法案「仮要綱案」を提示

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