2005年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

中皮腫死者6千超す

アスベスト 労災認定は284人

95年以降


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 アスベスト(石綿)がおもな原因とされるがんの一種、中皮腫(ちゅうひしゅ)による死者は日本政府が統計をとり始めた一九九五年以来、九年間で六千六十人にも達し、急増傾向にあることが厚生労働省の人口動態調査からわかりました。同じ期間に「アスベストによる中皮腫」と労災認定を受けているのはわずか二百八十四人にすぎず、アスベストが原因と国や企業に認められないまま死亡した人が相当数にのぼっていることが浮き彫りになってきました。

 厚生労働省人口動態保健統計課によると、日本政府は、世界保健機関の死因分類が大幅に改定された一九九五年にやっと中皮腫の死亡統計をとり始めました。その後増加傾向をたどり、二〇〇三年には八百七十八人に。九五年以前は中皮腫の死亡者数の実態すらつかまれていませんでした。

 他方、中皮腫の労災認定は、九五年度がわずか十三人。労災認定基準が拡大された二〇〇三年度で八十三人に増えましたが、死亡統計と大きくかけ離れています。

 アスベストは一九七〇年代から九〇年代初めまで年間三十万トン前後輸入され、建築材料に使われました。アスベストの入った建材を切断したり張り付けた建設労働者は退職者を含めると一千万人にも。

 有害性が高い茶石綿と青石綿の製造・使用が禁止されたのは九五年と遅れ、その他の石綿の製造・使用が原則禁止(一部をのぞく)となったのは昨年です。専門家は「一九六四年ごろにはアスベストの発がん性、中皮腫との関連がわかっており、使用禁止の対策を遅らせた国の責任が問われる」と指摘します。

 厚生労働省は問題が大きく報道された今月になってやっと石綿関係業界から健康被害報告をとり始めました。

 アスベスト輸入・使用禁止など安全対策を遅らせ、アスベストによる健康被害の実態も把握できていない国の姿勢が問われています。


 中皮腫 胸膜や腹膜から発生する悪性のがん。発見しにくく、有効な治療法が確立していません。アスベストを扱う作業者に高率で発症し、潜伏期間が肺がんよりも長い場合三十―四十年以上にも。労災認定基準は石綿肺がある場合や、石綿関連作業一年以上で胸膜肥厚斑(ひこうはん)などがある場合とされています。


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