2005年7月9日(土)「しんぶん赤旗」

東京裁判は「勝者の裁き」という意見をどう考える?


 〈問い〉 靖国神社問題に関連して、東京裁判をどう評価していますか? 米国の「勝者の裁き」という意見もあるようですが。(北海道・一読者)

 〈答え〉 東京裁判が、人道と平和の見地から日本の侵略戦争について明確な国際的審判をくだし、世界政治のうえでこのような行為が二度と許されてはならないことを明らかにしたことは、ナチス・ドイツのヨーロッパでの侵略戦争と大量虐殺を断罪したニュルンベルク裁判とともに、第2次世界大戦後の世界平和をめざす流れの発展にとって大きな意義をもちました。

 また、日本政府が「一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加えらるべし」としたポツダム宣言を受諾した経過にてらしても、再び戦争をくり返さない決意をうたった日本国憲法の精神にてらしても、東条英機元首相ら戦争指導者の処罰は必要な措置だったと考えます。サンフランシスコ講和条約第11条も「日本国は、極東国際軍事裁判所…の裁判(判決)を受諾」するとしています。

 同時に、東京裁判の経過全体をみれば、アメリカの政治的意向が裁判に大きく影響を与えたことは否定できない事実です。

 とくに、日本の戦争の最高責任者であり、1931年に開始された中国東北部への侵略戦争(いわゆる満州事変)から1945年の敗戦にいたるまで、戦争の全過程にかかわった唯一の人物だった昭和天皇について、その責任を問わないことを最初から裁判の不動の枠組みにしたことは、対日占領を円滑に進めようというアメリカ政府の意図によるものでした。

 そのため、戦争の実際の経過があいまいになり、戦争の全体についても、個々の戦争行為についても、責任の所在が明確にならないという問題が随所にありました。

 また、自らも植民地をもつ欧米諸国が裁判の実権を握っていたため、日本の植民地支配の問題点は追及されませんでした。

 他方、連合国の側の戦争行為については、アメリカによる東京大空襲や広島・長崎への原爆投下のような無差別攻撃、ソ連による捕虜の強制労働(シベリア抑留)など、戦争犯罪の重大な疑惑がある問題も、まったく不問に付されました。

 これらは東京裁判の弱点といわなくてはなりません。(文)

 〔2005・7・9(土)〕


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