2005年7月9日(土)「しんぶん赤旗」

郵政法案 参院の攻防は…

求心力失う小泉政権


 小泉純一郎首相が六日、サミット(主要国首脳会議)に向かう際、郵政民営化法案が参院で否決されても内閣不信任と受け止めると、衆院解散の可能性を示唆、八日、英国でも繰り返したことに、法案賛成派からも反発が噴出しています。「五票差での衆院通過」を受け、週明けからは、郵政法案の成否をかけた最終章・参院での一カ月余の攻防が幕を開けます。

■“薄氷”の波紋

 「率直に言えば、小泉首相の態度が少し悪かった」。首相の出身派閥・森派の安倍晋三自民党幹事長代理が七日、公然と首相を非難すれば、同派会長の森喜朗前首相も「衆院解散」発言を批判。さらに山崎派総会でも同日、幹部の“内紛”が表面化――。「五票差可決」の波紋は広がるばかりです。

 法案採決の五日の衆院本会議の取材で、たまたま自民党関係者と隣り合わせ、同じ光景を異なる思いで見ることになりました。

 「(自民内から)反対は二十前後、欠席・棄権は三十程度といわれているが、見通しは?」

 「いや、かなり際どいのでは。だが、執行部にはまるで緊張感がない。読みが甘すぎるんです」

 「ウォー!」。自民党から反対票が投じられるたびに、野党席から上がる歓声と拍手。「青票(反対票)が二十になった」「今、三十を超えましたね。これは大変なことに…」。顔色を失う隣席の自民党関係者。

■敗北に等しい

 結局、自民党からは反対三十七、棄権・欠席十四の合わせて五十一人が“造反”したわけです。

 「首相のいう『改革の本丸』がこの事態。これは政治的には、小泉の敗北に等しい」というのは、著名な政治評論家です。採決前には、自民党総務会で「修正案」を異例の多数決で了承させ「党議拘束」を宣言。武部勤幹事長ら自民党執行部も早くから、幹事長室、国対、派閥幹部とあらゆるつてで、選挙での公認権、役職などのえさで釣る、何より「衆院解散」で脅す……。

 そればかりか、連立を組む公明党も神崎武法代表が六月、選挙での推薦の“選別”を示唆したのに続き、一日には東順治国対委員長が「(法案に)反対した議員が仮に自民党で公認されても、推薦は難しくなる」と自民党反対派を強くけん制。自民党執行部は、採決直前には「欠席者も反対者同様、厳しい処分をする」と言明。そんな揚げ句の五票差可決でした。

 「反対も欠席も同じなら、『出席して反対しよう』と思った者も多い。武部らの“北風作戦”は完全に逆効果だった。採決前、堀内光雄前総務会長が派閥会長の辞表を出すなどの動きも、反対派を結束させた」(同前)

 日本共産党は審議の中で、法案が民間ではできない郵便貯金や簡易保険の全国一律サービスを破壊し、三百四十兆円もの国民の資産を日米の巨大資本に明け渡すものと主張してきました。“五票差”は何より、国民が民営化の本質を次第に見抜き、世論調査で七割もが「慎重に審議すべき」と答える現状が、国会に反映したものです。

■ハードルと壁

 さて、参院では、与党からわずか十八人が反対に回れば法案は否決に。これは「反対が四十六人必要だった衆院に比べれば、はるかに低いハードル」(政治ジャーナリスト)です。しかし――。

 参院自民党を仕切るのは、小泉首相の“後見人”で「参院のドン」青木幹雄参院議員会長。「青木は、旧橋本派はもとより他派閥から他党にまで、広い人脈を築き、影響力を持っている」(同前)

 しかも今回の郵政民営化の具体化は、小泉首相が三月末に突然、青木事務所を訪ね「政府で法案(骨格)をまとめたい」と宣言。青木氏が首相の強引な政治手法を批判しつつ、法案修正の「軟着陸」路線にかじを切ったのが始まりでした。

 低い「ハードル」と高い「青木氏の壁」――。

 反対派の自民党議員はいいます。「『五票差』の衆院のメッセージを、比較的反対の多い参院側がどう受け止め、行動するかだ。参院に解散の脅しは効かない」

 仮に参院で法案否決となれば、(1)衆院本会議で三分の二の賛成で再議決(2)両院協議会で「成案」を求める――などの方法があるものの現実には困難とみられます。

 「『自民党をぶっ壊す』という小泉のことだから、参院で否決でも衆院を解散するかもしれない。その時は、分裂選挙で自民は政権転落だ」「仮に小差で法案が成立しても、もはや小泉には掲げる看板はないに等しい。靖国問題などの外交的行き詰まりに加え、小泉政権は“五票差”で求心力を失った。『花道論』を含めて、派閥間の接近など、あちこちでポスト小泉の動きが強まりつつある」(前出の政治評論家)

 郵政民営化法案の最終章は、政局激動の幕開けとなるのでしょうか。

 (梁)


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