2005年7月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

子どもの安全守る


 大阪府寝屋川市での小学校教職員殺傷事件(今年二月)など、最も安全であるべき学校で子どもや教職員が殺傷される衝撃的な事件が相次いでいます。学校・地域で子どもたちの安全を守るために何ができるのか。各地でさまざまな模索や取り組みが始まっています。


学校で

保護者、住民が本音で

シンポで問題提起・討議

大阪・寝屋川

 二月に寝屋川市で発生した小学校教職員殺傷事件は、学校現場はもとより、多くの教育関係者、保護者・住民に大きな衝撃を与えました。この事件以後のさまざまな取り組みで、今感じていることを報告します。

 学校や子どもたちの安全問題を考える場合、次の課題が大事ではないでしょうか。一つは、行政による安全施策の充実の問題(主に警備員配置などのいわゆるハード面での充実)。二つ目は、学校の危機管理と地域に開かれた学校づくりをどう進めるかという課題。三つ目は、なぜこうした事件が多発しているのか、その背景となっている社会病理や教育のあり方を改めて問い、保護者、教職員・教育関係者、地域住民が本音を語り合える場をどうつくり合意を進めるかという課題です。

予算措置なし

 寝屋川では残念ながら、二月の事件が起きるまでの行政による安全施策はまったくお粗末といわざるを得ませんでした。四年前の大阪教育大付属小事件以来、教育現場からの強い要求にも耳を貸さず、警備員配置を含む予算措置の安全対策は皆無。「おとなの目と心で」の精神論の強調だけで、インターホン設置や児童の安全笛の支給などもすべて寄付や学校任せでした。

 この点での改善はやっと一歩前進し、今年度から小学校への警備員配置、防犯カメラ、校門の施錠とオートロックなどが行われましたが、「校門をすべて施錠」「来校者の点検」などのいわゆる「不審者対策」に重点が置かれ、保護者や地域住民にとって「閉ざされた学校」になる危険性があります。学校の警備態勢の充実とともに、保護者・住民が気楽に学校に行き来でき、多くのおとなの温かいまなざしに子どもたちが見守られる状況をどうつくるのかということが課題になっています。この点では、子どもの登下校時の安全対策で、保護者・住民の参加がさまざまな形で実施されるなど、地域・学校での模索が始まっています。

「競争と管理」が

 三つ目の課題では、六月四日に「いのち輝く学校と地域を」のテーマで教育シンポを開催しました。主催者の予想を大幅に超える二百五十人の参加があり、基調講演をした秋葉英則大阪教育大教授は、こうした事件の背景に、命へのこだわりをゆがめる社会病理と「競争と管理」による教育があることを指摘。子どもの発達の源泉は、他者とのかかわりにあることを強調しました。このシンポでは、パネリストに市内小学校の元PTA会長、寝屋川で長く児童・家庭相談室の相談員をされた方も加わり、それぞれの立場からの率直な意見・問題提起とともに、フロアからも教職員・保護者・市民・青年など七人が発言し、参加者全体に共感と確信を与えました。

 私もパネリストの一人として参加し、学校現場の課題や子どもたちとの豊かな人間関係を築く上で本当のゆとりが今、学校現場に求められていることを発言しました。痛ましい青少年事件がなぜこうも多発するのか。このことへのこだわりとともに、子どもたちへの安全指導が「知らないおとなに声をかけられたり、三メートル以内に近づいたら大声を出すか逃げなさい」といったあまりにも「悲しい指導」をせざるを得ない現状や、社会病理の克服と「競争と管理」の教育の改善を何とかしたいとの思いを改めて強くしています。(寝屋川市教職員組合委員長・石井佳宏)


地域で

登下校時に見守り活動

議論積み重ね 100人以上協力

京都・左京区

 わが子が通う京都市左京区の小学校区では、四年前に子どもが無理やり車に連れ込まれそうになった事件が発生したことをきっかけに全保護者集会を開き、「子どもの安全をどうしたら守れるのか」について論議を重ね、「子どもの見守り活動」が進められてきました。

散歩ついでに

 月二回「朝の声かけ運動」をPTAが呼びかけ、集団登校する子どもたちを集合場所まで見送ったり、学校まで通学路を歩く保護者がだんだんと増えていきましたが、最大の悩みは毎日の登下校の安全をどうするのかでした。そこで、地域の方にも積極的に協力を呼びかけましたが、その際「無理なく続けてもらうこと」を重視しました。そのため、通学時間を知らせる「見守ってください」ポスター(写真)を家に張り出し、その時間に犬の散歩や門掃(かどは)きをしてもらうようにしました。そうした中、ある年配の方は「毎朝の散歩のついでに」と子どもたちと歩き、横断歩道では最後のグループが横断するまで見守っていただいています。子どもにとっては有名人です。

 保護者も毎朝通学路で「井戸端会議」をしているうちに、子どもたちが次々と通学していきます。いろいろな保護者や同じ通学路を歩く中学生とも知り合いになるなど、思わぬ広がりも感じられています。こうした積み重ねで、現在では毎朝夕方の見守り活動に百人以上の方がたに参加・協力していただいています。

 昨年度は私がPTA会長でした。その一年間、子育てについて考える「PTAだより」を発行し、参観日や運動会などでは、保護者がグループをつくって学校内を短時間で見回ったり、「見守り活動」をしていただいている地域の方をPTAの会議に招いてその思いを聞く会を持つなど、保護者同士が協力しあう大切さを実感するとともに、子どもにとっても保護者にとっても「見守られているなあ」「大切にされているなあ」と実感できる取り組みをしてきました。

社会的弱者も

 現在、学区の各種団体のみなさんらによって「みまもる隊」が結成されようとしています。「校門前に立ってはどうか」などの意見もあったようですが、議論の末、特別なことはしないで、「みまもる隊」バッジを日常的につけて街を歩くこと、見守るのは子どもだけでなく、高齢者や社会的弱者も見守ることなどが話し合われています。こうした動きは、保護者にとって自分たちの子どもが地域のみなさんによって大切にされていると実感できるもので、この輪がさらに広がることを願うものです。

 このように、自然に人と人がつながることが、ひいては子どもが安心して遊び過ごせる地域づくりになるのではないでしょうか。

 もちろん、緊急連絡をどうするのかなど直接的な対策もPTAの議題として悩みの種ですが、常に議論し実践していることも報告しておきます。 (光永敦彦・京都府議)


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