2005年6月26日(日)「しんぶん赤旗」
新大統領にテヘラン市長
イラン 前大統領に大差
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【カイロ=小泉大介】二十四日実施されたイラン大統領選の決選投票で、テヘラン市長、アハマディネジャド氏(48)が、前大統領、ラフサンジャニ師(70)を大差で破り初当選を決めました。
イラン内務省が二十五日に発表した最終結果によると、アハマディネジャド候補が得票率約62%を獲得したのにたいし、ラフサンジャニ候補は同約36%にとどまっています。投票率は60%前後で、十七日実施の第一回投票の63%を下回りました。
選挙戦では、ラフサンジャニ師が対外的な緊張緩和や核疑惑問題解決を訴え、「強力な指導者」をアピールしました。これにたいし、アハマディネジャド氏は貧困問題の解決など経済政策を前面に掲げ、インフレや高失業率に苦しむ国民の間で支持を広げました。
第一回投票の結果、決選投票に進めなかった改革派政治勢力は、ラフサンジャニ師支持を呼びかけました。
イランでは昨年の国会選挙で保守派が勝利しており、今回の大統領選勝利で、保守派が司法、行政、立法のすべてを握ったことになります。
解説
貧困層対策を前面に
二十四日実施のイラン大統領選決選投票でテヘラン市長、アハマディネジャド氏が圧勝した背景には、ハタミ大統領が推進してきた改革の理念に共鳴しながらも、日々の生活で不満を募らせてきた国民の複雑な思いが反映しています。
アハマディネジャド氏は、厳格な政教一致と反米を掲げる最高指導者ハメネイ師に極めて近い政治的立場。しかし大統領選では、豊富な石油からの利益を貧困層対策に回すなど経済対策を前面に掲げました。
英字紙イラン・ニューズのシルザド・ボゾルグメヘル編集長は、「ハタミ大統領の改革は、文明間の対話など外交的には大きな成果を収めたが、インフレや実質20%といわれる失業率など経済問題では大きな課題を残した。『開放』『民主化』の理念だけでは国民を満足させられなかった」と分析しました。
国民の経済問題への関心の高さは、十七日の第一回投票で、十八歳以上の全国民に日本円で約六千円を毎月支給すると公約したカルビ前国会議長が、予想外の高得票で第三位となったことにも表れています。
またアハマディネジャド氏は、通勤はオートバイ、執務は小さな事務室というテヘラン市長としての仕事ぶりから、選挙選でも「清貧」なイメージを打ち出すことに成功。他方で前大統領のラフサンジャニ師は、米国を含む国際社会との「緊張緩和」を訴える一方、長い政治家歴での金権・汚職体質が広く指摘されてきました。
今回の選挙では、ブッシュ米大統領がイラン最高指導部の非民主性を指摘し選挙の正当性にたいする干渉的発言をしました。これがイラン国民の反発を呼び、対米強硬路線のアハマディネジャド氏浮上の一因となったとの指摘もあります。
イランでは最高指導者の権力が絶対で、大統領の権限は行政権に限られています。国民のなかでは、「現体制が続く限り誰が大統領になっても同じ」という声が広がっており、改革派陣営にとっては今後、このような声にどう応えるかが大きな課題となっています。
(カイロ=小泉大介)


