2005年6月16日(木)「しんぶん赤旗」
相次ぐ 航空機事故の背景
下請け化とハイテクへの過信
ことしの春以来、航空機による不具合(トラブル)発生や事故が相次いでいます。
十五日には日本航空のボーイング767型機が羽田着陸の際に、前輪のタイヤ二本が外れました。前日の十四日は全日空の同767型機が計器故障で高度を誤って飛行していました。ともに大事故には至りませんでしたが、徹底した原因究明が必要です。
整備部門では
日航機については、整備不良が考えられます。同社の整備関係者は、前輪にはブレーキシステムがなく回転するだけで、通常はこのような事故はない、といいます。考えられるのは、タイヤのボルトの緩みや車輪を支えるシャフトの折れ、または、パンクで何らかの力が働き二輪とも脱落したという可能性です。
いずれにしても、整備段階でどのようなチェックがなされていたのかを明らかにする必要があります。整備部門では安全よりもコスト削減が優先され、かつてのベテラン整備士が少なく、技術の継承もないまま下請けまかせになっています。現場の整備部門は、定時発着の厳守による時間不足と人不足で、十分に点検できないのが実情です。
知識なくても
一方、全日空機の高度の誤りも深刻です。この場合はいくつかの要因が重なって起きています。B767を操縦する機長によると、問題の一つは当該機長が機長席と副操縦士席の高度計の違いに気づいたものの、コンピューターの構造に熟知していなかったために、誤っていた副操縦士席の高度計に合わせてしまったことです。
二つの高度計が違う高度を示している場合、普通は予備の高度計を見てどちらが正しいかを判断します。予備の高度計は誤差が四百フィート(約百三十メートル)ほどありますが、あてにならないものではありません。
機長は運航支援の整備士に問い合わせていますが、整備士も構造を理解していなかったために、誤りを防ぐことができませんでした。
これらの背景には、メーカーや航空会社のコンピューターへの過信があります。従来は、航空機器に習熟した航空機関士が乗務し、コンピューターを切り替えるだけでは解決しないことを注意できました。しかし、現在のハイテク機では、パイロットに航空機器のシステムに対する知識がなくともコンピューターがカバーをしてくれる、という設計思想で貫かれています。
パイロットは計器のデータを読み取り、チェックすることはできます。が、各システムごとにコンピューターがいくつあるのか、どうつながっているのかを熟知しているわけではありません。
B767の機長は「現在のパイロットは、昔のように航空機関士から機長に昇格するわけではないし、システムに強くない。ハイテク機といっても不具合が多いし、安全性が比例して向上しているわけではない。今回の事故は“ハイテク機の落とし穴”にはまったともいえ、とても人ごととはいえない」と語っています。(米田憲司)

