2005年6月12日(日)「しんぶん赤旗」

“仕事を” あきらめず立ち上がった

「青年一揆」の輪

京都で集い 広がる「君は悪くない」


 「あふれるフリーター『461万人』の試算 10年後3人に1人 収入1/4 経済損失」「娘、息子の悲惨な職場」「格差社会 狭き雇用 迫る不安」――。新聞や雑誌の見出しにため息をつきそうになる仕事・雇用状況のなか、京都の青年が動き出しました。十二日に三千人が入る円山音楽堂で集会を開きます。その名も「青年一揆」! 青年はあきらめていません。(京都府・足立裕紀子)

 京都市の中心部、パソコンで求人情報を探す「ハローワーク烏丸御池」。閉館三十分前でも、窓口もパソコンの前も、青年であふれています。

 京都府の十五歳から二十四歳の完全失業率は全国平均10・1%を上回る13・0%(二〇〇三年度)。勤労者の四人に一人はパート・アルバイトで、比率は全国最高(〇二年度)です。派遣労働者も〇二年度までの五年で約三倍に急増しました。

怒り込めたくて

 「失業者は減ったとか雇用が改善したとか言うけど、僕の周りでは逆。最初は『フェスタ』なんて意見もあった。でももっと“怒り”みたいなものを込めたくて。もうカッコつけた横文字の集会をやってる場合と違う」

 集会名を「青年一揆」とした理由を話すのは、実行委員会事務局の永井宏和さん(30)。現在は京都総評の書記ですが、以前は保育士でした。

 再就職した私立保育園で、やっと正規職員になることができました。時間外に書けと言われた保育記録を徹夜で書き、休日は絵本を探しに図書館へ。疲れ果てて「きちんと歩けているか、歩き方まで気になった」というほど追いつめられていました。ある朝、突然仕事に行けなくなり、退職。

 「『仕事が遅い自分が悪い。情けない』と自分を責めたけど、僕だけじゃなかった。昔の僕と同じ思いの青年に『あきらめんといてほしい』と言いたい。一揆の運動もその言葉に集約されてきた気がします」

「救ってくれる」

 山家悠紀夫氏(暮らしと経済研究室主宰)を講師に学んだ五日のプレ企画。シンポジウムのパネリストになった就職活動中の女子学生(21)は、応募した五十社中、最終試験に行けたのは一社だけ。まだ就職が決まりません。

 「履歴書を目の前で破って反応を見る」などという常識が通用しない面接試験、また、訪問販売という名の“押し売り”を強いる会社…。就職したければ、自分の生き方や価値観をねじまげざるをえないという状況が、まかり通っています。

 「就活(就職活動)で自分は悪くないなんて叫べない。そんなことを言える場所も余裕もない。だから『青年は悪くない』と言われてうれしかった。一揆は一人で悩んでいる子を救ってくれると思う」と話します。

「僕が変われる正念場」

 プレ企画に参加したフリーターの男性(27)は、スイミングスクールのインストラクター。給料は七十五分で千百五十円です。泳法指導以外の仕事は十五分でする計算ですが、指導日誌さえ書ききれず、サービス残業に。プールで子どもの命を預かって一日十時間以上働いても、五月の給料は十一万三千円でした。

 それでも続けるのは子どもを相手に教えることが好きだから。小学校の先生をめざしています。

 以前はデザイナーとして働き、残業つづきの毎日に「何かおかしいと思った」と言います。「親は大企業の管理職。僕も『利益さえあげればいい』という考えにどっぷりつかっていた。でも、今やりたいことをあきらめて、満足を得られない生活をするのは人間らしくないと思った。一揆にはもちろん行きます。僕が変われる正念場だから」

 「街頭でチラシをもらい趣旨に共感しました。涙が出そうになった」――。「私たちはあきらめない」という訴えが、「青年一揆」の運動を、そして青年の中での共感と参加を広げてきました。

 実行委員会の中心を担ってきた事務局は、府内各地やハローワークを巡るキャラバン宣伝など、「おまえらが働きすぎや」と言われるほど頑張ってきました。最初は呼びかけたわけでもないのに、九つの地域実行委員会が次々とでき、プレ一揆を成功させるなど、“円山成功”へ奮闘。府北部や三重県、首都圏からも、青年がバスツアーを組むなどして参加します。

 また推進ニュース「ライジング・サン」を発行して五百人の参加をめざす全京都建築労働組合青年部など労組青年部のとりくみも広がりました。

 青年の中だけではありません。「失敗してもええからやってこい」と永井さんを実行委員会の事務局に送り出した京都総評は、単産に要請し、約十三万枚のビラを新聞に折り込みました。青年の熱き思いと頑張りに期待が寄せられています。

 「ぜひ話を聞きたい」と講演を依頼した、プロ野球選手会事務局長の松原徹さんもその一人。先約を断り、「青年一揆」に駆けつけてくれます。

 松原さんは、「熱い気持ちが伝わってきたんです。今の若者が、厳しい現実を前に目標を高く掲げ、あきらめずに声をあげようというのは本当に希望です」と話します。

 永井さんは言います。「雑誌の取材で『負け組の集会か』と聞かれました。でも本当に負けてるやつは立ち上がったりしない。青年は悪くない。負け組と思わされているだけです。一揆に参加して『自分たちは負けてなんかない。あきらめへん』と一人でも多くの青年に声をあげてほしい」

 「青年一揆」は十二日(日)午後零時半、京都市東山区の円山音楽堂で行われます。青年の「魂のリレートーク」や松原さんの記念講演、クイズやライブなどを企画。集会後、京都市役所までデモ行進を行います。


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