2005年6月11日(土)「しんぶん赤旗」
点検郵政民営化法案
設置規準 ネットワークに大穴
首都圏のとある田舎町の郵便局。「おはよう」と張りのある声で郵便局にやってきた男性は、「普通預金から定額預金にかえたいんだけど、パンフレットなどはある?」と局員に尋ねました。
「ハイ。定額預金には預け入れ後六カ月たてばいつでも…」。局員は身振り手振りで説明を始めました。そこに、子どもが通帳を持って入ってきました。
「ボク! 窓口はあっちだよ」と、別の局員が優しく教えています。
民営化されたら、この親切で便利な郵便局が廃止・統合されるのではないか―。国民の不安は高まっています。
〇省令で定める〇
竹中平蔵郵政民営化担当相は、郵便局での金融ネットワークを確保する仕組みを、四段階で考えているといいます。
(1)郵便局の設置規準の設定(2)民営化を開始する二〇〇七年四月一日から完全に民営化する一七年三月末までの移行期間についての契約(3)移行期間後の契約(4)社会・地域貢献基金の創設―です。
まず、設置規準の問題です。
現行では、二万四千七百局ある郵便局の維持が義務づけられています。これを、今回の郵便局株式会社法案の第五条で「あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならない」と、郵便局の設置を義務づけることにしました。
しかしその設置規準は、国会の議決を必要としない省令で定めるとされているだけです。
竹中担当相が示す設置規準とは、「市町村には一つ以上」という規準に加えて、二つの要件をあげます。
一つは、「過疎地については、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」。もう一つは、「都市部についても国民の利便性に支障の生じることのないよう配慮する」というものです。
〇都市特定ない〇
過疎地については、二〇〇〇年度施行の過疎地域自立促進特別措置法(十年間の時限立法)にもとづいて決められます。同法は、人口の著しい減少によって地域社会の生産・生活環境機能が低下している地域を指定し、対策を講じる法律です。
このように、過疎地には「現在の水準」が維持されることが法的に裏付けられています。
一方、都市部は「法律的な定義は困難」と竹中担当相がいうように、法的措置はありません。麻生太郎総務相も「都市部はどこだ、都市周辺部はどこだという特定をいえるほど、知識が今の執行部にあるとはとても思えない」と、人ごとのようにいいます。
市町村で一局以上、および過疎地の郵便局数を足し合わせても七千局程度にすぎません。現在、二万四千七百局ある郵便局ネットワークのうち、七割以上で設置義務付けがなくなるのです。
郵便局ネットワークに大穴を開ける規定です。

