2005年6月7日(火)「しんぶん赤旗」

日米の迎撃ミサイル開発

米戦略への一体化さらに


 大野功統防衛庁長官は五日、日米が共同技術研究を進めている次世代型の迎撃ミサイル=スタンダードミサイル3(SM3)に関し二〇〇六年度から開発段階に移行する考えを表明しました。大野長官は八日、来日するオベリング米ミサイル防衛庁長官と会談し、具体的な開発の進め方を協議する意向です。

米と軍需企業の要求

 大野長官が〇六年三月に予定されている迎撃実験の結果さえ待たずに開発段階への移行を表明した背景には、米国と日本の軍需企業の強い要求があります。

 米側は今年二月の日米防衛首脳会談で、次世代型SM3を十月以降に開発する方針を伝達し、日本側に参加を要求。同時に、三菱重工をはじめ技術研究を請け負ってきた日本国内の軍需企業も大量生産を強く求めてきました。

 日本政府も〇五年十二月、「武器輸出三原則」を緩和し、MD関連装備の共同開発・生産を規制から除き、道を開いていました。

 米国が進めるMDは相手国の弾道ミサイルによる反撃を無力化するもので、先制攻撃戦略の重要な柱の一つになっています。

 日本政府はすでに、米国で開発・生産が進められているSM3(従来型)と地上配備型のパトリオットミサイル(PAC3)の導入を決めています(〇三年十二月)。これらの兵器の導入は基本的に米国からの輸入や技術移転による開発で行われます。

 これに対して次世代型SM3の共同開発は、日本側がMD兵器の開発に直接加わるもので、米先制攻撃戦略との一体化をさらに深めることにつながります。

技術的な欠陥が露呈

 加えて、米国が進めるMDは技術的な欠陥が露呈し、国内外で批判が高まっています。

 地上配備型ミサイル(GMD)は迎撃実験に連続して失敗し、稼働が〇六年以降にずれ込みました。「五回中四回、迎撃実験に成功した」とされるSM3も標的を大きくしたり、「おとり」(偽の弾頭)を使用しないなど非現実的な環境下で実験が行われたにすぎません。

 こうした欠陥品であるにもかかわらず、日本政府はMD導入経費を八千億円から一兆円にのぼると見込んでいます。さらに、実験も行われていない次世代型SM3の開発に進めばいっそうの無駄遣いが強いられることになります。(竹下岳)

 「ミサイル防衛」の日米共同技術研究 一九九九年度に始まり、イージス艦に配備する次世代型スタンダードミサイル3(SM3)の四つの構成部品を対象にしてきました。(1)赤外線を使用して敵ミサイルを識別、捕捉、追尾する「赤外線シーカー」(2)迎撃ミサイルの先端部分を保護する「ノーズコーン」(3)敵ミサイルを破壊する「キネティック弾頭」(4)三段階で切り離されるミサイルの二段目の推進力となる「第二段ロケットモーター」―です。

 次世代型SM3は口径が21インチで、従来型(13.5インチ)よりも推進力が強く、射程距離も大幅に拡大するとされています。



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