2005年5月31日(火)「しんぶん赤旗」

こちら社会部

所長が架空保険契約

顧客データから無断作成

明治安田生命 元職員が告発


 生命保険大手、明治安田生命保険(本社東京、金子亮太郎社長)の営業所長が、営業職員の顧客データを勝手に使って架空保険契約をつくっていたことが、元営業職員の本紙への訴えでわかりました。明治安田生命は“不適切な”契約があったことを認めました。同社は今年初め、十五億円にのぼる保険金不払いで金融庁から異例の業務停止命令を受けたばかりです。

 営業所長による不正契約を告発したのは、阿佐ケ谷営業所(東京・杉並区)で営業職員として勤務していた上村むつみさん(41)。知人の紹介で同営業所に昨年六月から勤め始めました。問題の不正契約が行われたのは九月下旬のことです。

これ以上無理

 当時、同営業所は営業成績優秀者の表彰式出席をめざしており、所長は上村さんに新規契約の取り付けを催促。その月、すでに数件の契約を成立させていた上村さんは、これ以上無理はしたくないと所長に伝えました。

 ところが所長は、上村さんのパソコンにあった顧客データを引き出し、上村さんの離婚した元夫名義で彼女の長男の「子ども保険」契約を無断で作成しました。所長が保険料を半年間、肩代わりすることになっていました。名義人の住所は上村さん宅。上村さんは、自宅に届いた保険証券を見て、初めてこの契約のことを知りました。所長は、顧客データを使い、名義人の氏名と住所を勝手に組み合わせて架空の保険契約をつくり上げたのです。

 上村さんは「元夫に知られたら養育費をストップされるかもしれない。この契約は破棄してほしい」と所長に訴えました。

 所長は「身内の契約はあなたが営業職員を辞めない限り処理できない規定になっている。だから辞めるしか方法がないんだ」といい、上村さんは、自分が辞めることで保険を解約できるのなら、と十二月に退職しました。

 しかし、営業職員を辞めれば解約できるという所長の主張は根拠がなく、保険は、名義人の元夫か元夫になりすました所長でなければ解約できませんでした。

たらい回しに

 上村さんは今年一月、労働基準局、金融庁、生命保険協会に電話をかけ、訴えました。しかし、返事はすべて明治安田生命本社にいってほしいというもの。同本社では、電話をたらい回しにされ、最終的に阿佐ケ谷営業所を所管する武蔵野支社につながりました。担当者の回答は「保険料を払わずにいれば保険は失効するのだから、最初から存在しない契約だと思えばいい」という無責任なものでした。食い下がると、「調べて返事をする」といったものの、その後、連絡は来ませんでした。

 本紙の取材に対し、同社広報部は、四月に開設されたばかりの「コンプライアンス統括部」で調査をすると約束。数日後、「不適切な契約があったことを確認した。上村さんの子どもの保険はすでに取り消されている」との回答がありました。しかし、詳細については、何度問い合わせても「現在調査中」の一点張りです。

 同社の金子社長は、生命保険協会の次期会長に内定しています。業界に模範を示す立場が問われます。(中村美弥子)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp