2005年5月31日(火)「しんぶん赤旗」

主張

もんじゅ最高裁判決

安全軽視と行政追随の不当


 核燃料サイクル開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」の設置許可無効を住民が求めていた訴訟で、最高裁判所は三十日、設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支部判決を取り消し、住民の訴えを退ける逆転敗訴の判決を出しました。

 「もんじゅ」は一九九五年にナトリウム漏えい・火災事故を起こして運転を停止しています。その安全性に国民から厳しい批判があるなかで、政府がねらう運転再開を後押しする不当な判決です。

原子炉の危険性を軽視

 二〇〇三年一月の高裁判決は、ナトリウム漏えい事故対策、蒸気発生器伝熱管破損事故、炉心崩壊事故の三点にわたって、「もんじゅ」設置許可の安全審査には「看過し難い過誤、欠落」があり、「原子炉容器内の放射性物質の外部環境への放散の具体的危険性」を否定できないとしていました。

 そして、原子炉内の大量の放射性物質が放出された場合に脅威にさらされる人間の生命は、何事にも代え難いものだということを重く見て、安全審査に重大な瑕疵があれば設置許可は無効だとしました。原子炉の危険性を直視した妥当な判断です。

 ところが、最高裁は、安全審査に「看過し難い誤りや欠落があるとはいえない」とし、高裁の判断を全面否定しました。原子炉の危険性と住民の安全を軽視するものです。

 安全審査の目的は、原子炉の基本設計に示される安全対策が災害防止に十分かどうかを確認することです。この審査に重大な欠陥があれば、事故を未然に防ぎ、住民の安全を確保することは困難になります。

 炉心崩壊などの過酷事故を安全審査でどう扱うかも、大きな争点でした。

 一九七九年の米・スリーマイル島原発事故や八六年のソ連・チェルノブイリ原発事故を踏まえて国際原子力機関(IAEA)が定めた「原子力発電所のための基本安全原則」は、炉心崩壊などの過酷事故が起こり得ることを前提に対策をとるよう求めています。

 ところが日本政府は、炉心崩壊事故を「技術的には起こるとは考えられない」として、安全設計の想定事故から除外しています。「安全神話」そのものです。

 政府は上告理由で、炉心崩壊事故は「現実に起こり得る事象としてその安全評価がなされなければならない」とした高裁判決に対し、「行政庁等の専門技術的判断に対する尊重を欠く」と反論していました。最高裁判決は、この「安全神話」にたった政府の見解に追随したものであり、重大です。

 安全審査のあり方をめぐって問題が起きる根底には、わが国の安全規制が原子力を推進する行政のなかで行われていることがあります。安全規制を担当する原子力安全・保安院は、原発・核燃料サイクル推進の経済産業省のなかに置かれています。 「安全神話」を一掃するとともに、国際的基準から立ち遅れた安全規制の体制を抜本的にあらため、推進行政から独立した規制機関を確立すべきです。

開発は根本から見直しを

 また、高速増殖炉開発に取り組んできた欧米諸国は、技術的・経済的な困難により撤退しました。「もんじゅ」にはすでに八千億円以上の資金が投入されました。研究開発費は一兆円規模です。

 高速増殖炉開発を続けることは、無駄と危険を増殖させる愚挙であり、根本から見直すべきです。


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