2005年5月31日(火)「しんぶん赤旗」
住基ネットに違憲性
「プライバシー権侵害」 離脱認める
金沢地裁
住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)はプライバシーの権利などを侵害し憲法違反として、石川県の市民団体メンバー二十八人が国や県などに個人情報削除や損害賠償を求めた訴訟で、金沢地裁は三十日、「住基ネットからの離脱を求める原告に限れば住民基本台帳法の条文は憲法一三条に違反する」と判断、原告の個人情報の国への提供禁止と削除を県に命じました。損害賠償は認めませんでした。
住基ネットについては金沢地裁以外にも東京など全国十二地裁で同様の訴訟があり、原告団・弁護団・支援する会は「住基ネットの違憲性を明快に断定したもので、意義の大きさは計り知れない」と評価する声明を発表しました。
判決で井戸謙一裁判長は、「個人情報に住民票コードが付けられれば、多面的な情報が瞬時に集められ、住民が行政の前で丸裸にされる」と指摘。その上で、住基ネットの目的は「住民の便益」と「行政事務の効率化」だとし、「プライバシー権と住民の便益のどちらを優先させて選択するかは、各個人が自らの意思で決定すべきで、行政が便益の方が価値が高いと押し付けることはできない」とのべました。
判決はプライバシー権を憲法一三条の個人の尊重・幸福追求権のひとつに位置付けたうえ、プライバシー権のなかに「自己情報コントロール権」を認めました。弁護団は「明文をもって認めたのは恐らく初めて」と指摘しています。また、住基ネットのセキュリティーについて確実かどうかは疑問としましたが、「具体的危険があると立証されたとまではいえない」とのべました。
住基ネット すべての国民の住民票に十一ケタの番号(住民票コード)を付けてコンピューターで管理し、全国の自治体が専用回線で共有するシステム。住所、氏名、生年月日、性別の四つの個人情報と住民票コード、これらの変更履歴が対象で、二○○三年八月に本格稼働しました。プライバシー侵害や情報管理の安全性の懸念があり、システム不参加や住民の選択制をめざす自治体もあります。

