2005年5月30日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

被害者の支援 地方では

配偶者からの暴力

DV法改正から半年


 配偶者、恋人などへの暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)。昨年十二月の改正DV防止法では、国と自治体の被害者にたいする自立支援への責務を明記し、基本計画づくりを都道府県の義務としました。どんな取り組みが始まっているのか、岡山市と愛知県大府市に見ました。


夫婦間でも暴力は犯罪 根絶計画を超党派で推進 岡山市

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 岡山市は二〇〇一年に「さんかく条例」をつくり、〇二年に「さんかくプラン」を策定しました。いわばDV根絶計画です。背景には市民の運動と提案があり、日本共産党岡山市議団もDV問題を重視し、市議会では超党派ですすめてきました。

 とりわけ女性の生命と人権にとって、重大な問題なので、条例をつくる際にもDV問題の解決につながるよう重視しました。その結果、DV被害者の相談窓口の設置、緊急一時保護の対応、そして自立支援までを視野に入れた計画となったのです。〇四年十二月に岡山市は改正DV法にもとづき、配偶者暴力相談支援センターを設置しました。

いきなり顔殴られて

 五十代の女性Aさんは、ある日、生活相談で党市議団を訪ねてきました。結婚して三十年近く、夫はAさんを奴隷のように働かせ、生活費も渡さず、買い物にはいつも夫がついてきます。Aさんは初めて三千円分の宝くじを買ったある日、夫にいきなり顔を殴られました。それまでにも離婚しようと何度か思ったこともありましたが、娘二人のことを考えて思いとどまってきました。Aさんは自分がDV被害者だとは自覚していませんでした。私たちはまず「勇気を出して相談してくださってよかった」と受け止め、話を聞き、今後どうしたいのかを一緒に考えました。

 Aさんは夫から離れることを決意しました。それまで何度も警察や女性相談所に駆け込んできましたが、支援者がいなかったのです。Aさんの意思にもとづいて、日時を打ち合わせて、一時避難場所を確保し、家を出ました。前日には、何かおかしいと感じた夫が包丁を持ち出す場面もあり、まさに危機一髪でした。Aさんは初めてゆっくり安心して眠ることのできる日々を手にしました。

 生活保護の申請をしたAさんは、女性センターに通ってDVについて学習し、DV被害者であることを自覚しました。自分の人生を自分で決めていく力を回復しつつあるAさんはいま、ヘルパーの資格をとり、娘さんと二人で自立して暮らしています。離婚はまだ成立していません。

心と体に深い傷負い

 心と体に深い傷を負った女性たちが自立していくのは並大抵のことではありません。生活自立支援の施策が必要です。DVから逃れても、その後の道のりが長いのです。今後は医療機関との連携を含めて、早い時期での被害者支援をしていきたいと考えています。

 鳥取県は、住宅確保のための敷金の補助制度を持っていますが、岡山市にはありません。DV被害者に「あなたは悪くない」というメッセージを送りながら暴力のない世の中をめざしましょう。夫婦間であっても暴力は犯罪なのです。(日本共産党市議 崎本とし子)


市施設に民間シェルター 運営費に苦労、バザーも 愛知・大府

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 愛知県大府(おおぶ)市では一九九二年から女性の悩み相談を実施し、相談件数も、DVに関する相談の割合も増える傾向にあります。大府市では公的施設に民間シェルター(緊急一時保護施設)の相談窓口を設け、協力して運営管理にあたるという官民が連携したDV対策システムは全国でも珍しく内閣府からも注目を受けています。

 大府市のすべての男女共同参画事業にかかわる市立「石ケ瀬会館(ミューいしがせ)」は、DVの相談事業もやっています。DV防止法施行により「ミューいしがせ」への相談が増加。シェルターの必要性が高まったことからDV被害当事者の発案で、民間シェルター・ウイメンズハウスが、市の施設「ミューいしがせ」に窓口を開設しました。「ミューいしがせ」相談室で、シェルター入所への面接を行います。また入所中のケア、自立に向けての相談も受け、カウンセリングが必要な人には予約を受け対応しています。

 シェルターには、市が半額の家賃補助をしていますが、運営費をカンパやバザーで補うなど、苦労もあります。

 今後、被害者の救済と自立支援、DV根絶にむけて民間と行政の共同をどう進めていくか研究することが必要ではないかと思います。担当者から(1)地方自治体の支援には限界があり、国、県の財政支援が必要だ(2)シェルターは十人のボランティアに支えられていますが、彼女ら相談員の身分保証が必要だとの声が寄せられています。(日本共産党市議 山口広文)


法の中身知らせ効果あるものに

 参議院の超党派プロジェクトチームで改正法の立法化に取り組んだ吉川春子参院議員 地方自治体の支援義務の明記は法改正の大きなポイントでした。この支援義務は、DV法をより有効なものにしようと議論の末に明記されたものです。

 改正してまだ半年。各地の取り組みに注目していますが、制度をもっと広く知っていただきたいと思います。それは、民間団体のDVの事業に都道府県が補助をすれば、その半額分を国が特別交付税で補てんするという制度です。こういった点を活用しながら、国、都道府県を動かして、実効あるものにしたいと思います。


都道府県に策定義務づけ

 改正DV防止法 配偶者(事実上の婚姻関係も含む)からの暴力を対象とし、これまでの暴力の定義では身体的暴力のみだったものに精神的、性的暴力も含めました。生命や身体に危害が加えられることを防止する保護命令では、配偶者だけでなく同居する子どもへの接近禁止を対象に加え、実効性をたかめました。また国と地方自治体に被害者への自立支援の責任を明確化し、都道府県に基本計画の策定を義務づけました。そのうえで国は、地方の指針となる基本方針を定めています。基本方針には、住民基本台帳閲覧の制限、雇用・住宅での支援、健康保険取得と子どもの就学での対応など、盛りこんでいます。


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