2005年5月30日(月)「しんぶん赤旗」

レバノン総選挙 投票始まる

宗派間の対立残す


 【カイロ=小泉大介】諸宗教・宗派の「モザイク国家」とよばれるレバノンの国民議会総選挙(一院制、定数一二八)が二十九日、始まりました。この日投票が行われるのは首都ベイルートの三選挙区(定数一九)で、これにつづき、南部、東部、北部の各選挙区で六月十九日まで各週の日曜日に順次実施され、結果判明は同日以降となります。

 今回の総選挙は、レバノンで一九七六年以来駐留をつづけ、さまざまな政治的、社会的影響力を行使してきたシリア軍が四月末に撤退してから初めてのもの。軍撤退後のシリアとの関係のあり方や、独自の安全保障体制の構築、停滞する経済の打開、政治改革などを争点にした新たな国づくりの第一歩となるもので、「国民が最も熱望した選挙」(レバノン紙デーリー・スター)です。

 首都の選挙情勢は、二月に暗殺された反シリア派のハリリ元首相の息子、サード・ハリリ氏率いるグループが大躍進の勢い。カラミ前首相や、ラフード大統領の息子など親シリア派といわれる有力候補が次々と出馬を取りやめたこともあり、定数十九のうち九議席を無投票で獲得し、残る十議席も独占する可能性があります。ハリリ氏はイスラム教スンニ派ですが、キリスト教候補も自グループに取り込んでいます。

 南部では同地を拠点にしてきたヒズボラ(イスラム教シーア派の民兵組織の政治部門)など親シリア勢力の圧勝が濃厚ですが、全体ではハリリ氏グループなどシリア軍撤退を推進してきた野党が合わせて過半数に達するのは確実な情勢です。

 一方、現地からの報道によれば、約三十年ぶりの「自由」選挙にもかかわらず、候補者や政党による具体的な政策論争は低調で、ハリリ元首相の弔い合戦の様相を色濃くしています。またシリア軍の駐留をめぐり鮮明となった亀裂とともに、七日に亡命先から帰国した反シリアのアウン元将軍(キリスト教マロン派)が候補者調整をめぐりハリリ氏派との共闘を拒否するなど、宗教・宗派間の対立の火種が残されたままです。

 今回はレバノン史上初めて、選挙の公正な実施に向け、欧州連合(EU)が百人を超す選挙監視団を派遣したほか、米議会も同様のチームを送っています。


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