2005年5月29日(日)「しんぶん赤旗」

NPT(核不拡散条約)再検討会議閉幕

保有国 廃絶の約束守らず


 核不拡散条約(NPT)2005年再検討会議は27日、4週間の日程を終了しました。会議の結果をまとめた「最終文書」は採択されませんでしたが、会議では、米国をはじめとする核兵器国が核兵器廃絶の「明確な約束」を誠実に果たしていないことが明確になりました。一方、世界中から集まった非政府組織(NGO)の行動は政府代表をも驚かせ、核兵器廃絶の世論が世界中に広がっていることを改めて示しました。

 (ニューヨーク=山崎伸治)


米国の核戦略が障害

 「一九九五年、二〇〇〇年に合意した課題はいまも有効だ。合意したという事実を否定するのは危険なことだ」―カナダのマイヤー軍縮大使は二十七日、NGOとの会合で明言しました。

 外交交渉で合意したことは否定できない―九五年のNPT延長・再検討会議当時、軍縮大使として同条約の無期限延長を各国に働きかけた米国のグレアム元軍縮大使も指摘しました。問題は「みなさんご承知のように、これら(当時)の約束が何一つ守られていない」ことにあります。過去二回のNPT再検討会議では、核兵器国がいっそうの核軍縮に努めることが明確に合意されました。今回の再検討会議がそれを取り上げるのは、会議の任務として当然のことでした。

 ところが核使用政策の具体化を急ぐ米国は、昨年四、五月の準備委員会で提案された議題案が、九五年、二〇〇〇年の再検討会議の「最終文書」に触れているとして反対。今回の会議を通じてその立場を変えませんでした。それが結果として実質的内容のある「最終文書」不採択の最大の要因となりました。

 エジプトなどアラブ諸国が反発したのも、九五年の会議で中東非核地帯の創設を約束しながら、いまだにイスラエルが応じず、米国がその後ろ盾となっていることへの批判からです。今回の再検討会議でエジプトが議論を妨害したとの指摘に関連して同国のファタラ外務次官は、「再検討するなら、九五年、二〇〇〇年の合意についてもやるのは当然だ。そのことを求めるのがなぜ後ろ向きなのか」と語りました。

 実質的な文書の採択はなくても、各国が一般討論演説や作業文書で提起した問題は重要な内容をもっています。マレーシアはコスタリカとともに核兵器廃絶条約に関する作業文書を今回の会議に提出しています。

市民の声、政府に影響

「私たちは多数派だ」

 「われわれは市民社会の代表、すなわち信任状も政府の肩書もない人たちの代表の訴えも聞いた。彼らは再検討会議できわだった貢献をした」―会議の初めの一般討論では発言しなかったシエラレオネの代表が最終日の演説で述べました。

 主要委員会の設置をめぐって水面下でさまざまな協議が行われていた十一日、NGO代表の訴えを聞く公式会合が開かれました。「出席した各国代表の数は一般討論よりも多かった」と婦人国際平和自由連盟事務局長のスージー・スナイダーさんは胸を張ります。

 今回の会議に世界各国から集まったNGOの人たちは約千七百人。過去最高だといいます。会議開会前の一日には、日本原水協の八百三十人の代表をはじめ、四万人が参加してニューヨーク市内でデモと集会が開かれ、「核兵器ノー、戦争ノー」の声を上げました。

 秋葉忠利広島市長、伊藤一長長崎市長も出席しておこなわれた核兵器廃絶署名の伝達式。日本被団協による国連本部内での初の原爆展。各国代表も招いての連日の学習会や講演会。各国代表への直接の働きかけ―核兵器廃絶をいまこそというNGOの人たちの活躍は多岐にわたりました。

 こうした役割は政府も認識。カナダ代表は主要委員会で、NGOの参加をもっと拡大すべきだと提案しました。

 一方で日本政府は、一般討論でも核廃絶の「明確な約束」に言及せず、米国の新型核開発計画への批判もせず、被爆国の政府としての歴史的責任を放棄しました。

 「私たちは多数派だ」―秋葉市長は繰り返し訴えました。国際社会では核兵器廃絶を求める声こそ多数派です。その声をさらに広げていくことが求められています。


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