2005年5月26日(木)「しんぶん赤旗」

NPT会議 最終文書採択 困難に

「核廃絶」拒否の米が障害


 【ニューヨーク=山崎伸治】国連本部で開かれている核不拡散条約(NPT)再検討会議では二十四日、核不拡散問題を中心に討議する第二主要委員会が、報告の採択に至らずに予定した会議日程を終了しました。核軍縮と原子力の平和利用に関する二つの委員会の協議は続いていますが、最終日の二十七日に予定されている最終文書の採択は難しくなったとの見方が広がっています。


 会議に詳しい非政府組織(NGO)関係者によると、期限を切った核軍縮などの明記を求める非同盟諸国に対し、米国が前回の再検討会議で合意した「核廃絶の明確な約束」への言及の削除を要求しており、核兵器廃絶を拒絶する米国の姿勢が報告案とりまとめの大きな障害になりました。

 同関係者によると、米国はそれぞれの報告案の文言について次々と「問題点」を指摘して「是正」を求めながら、具体的な修正案は示さないという消極策で、報告案そのものの骨抜きを図ろうとしているといいます。

 各委員会の報告は二十五日までに起草委員会でまとめ、本会議で最終文書として採択する予定になっていました。最終文書が採択できない場合は、議長声明の確認で終わる可能性も指摘されています。

 核廃絶の明確な約束 2000年に行われた前回の核不拡散条約(NPT)再検討会議では、米国を含むすべての核保有国が「核兵器の完全な廃絶を達成する」「明確な約束」を行いました。締約国の核軍縮への努力を規定している同条約第6条を強化するもので、核兵器の廃絶を求める国際世論と運動を反映したものです。

怒り募らせる非核諸国

 最終文書の採択が危ぶまれる事態になった根本要因は、核使用に突き進むブッシュ米政権と、前回会議で米国も含めて合意された核廃絶公約の実行を迫る非同盟諸国などの非核保有諸国との和解しがたい対立にあります。

 二〇〇〇年の前回再検討会議での「核保有国による自国の核戦力の完全廃絶の明確な約束」は、クリントン前政権によって合意されました。その後に発足したブッシュ政権は、二期目に入り、従来の「核抑止」にとどまらず核兵器を実際に使用する方向での核戦略見直しを着々と進めています。

 戦域核兵器の使用例を詳しく検討した統合参謀本部の核兵器運用指針「統合核兵器作戦ドクトリン」は、その一例です。米国は、過去の国際会議での合意がどんなものであれ、この路線を猛進する構えです。

 サンダース米大使は二十日のNPT会合での声明で、「NPTは核保有国の核戦力近代化を禁止していない」と発言。米国が進める小型核兵器や地中貫通核兵器の開発、核弾頭更新などの動きを「近代化」の名で合理化しようとしました。

 同氏は、核保有五カ国の核独占を正当化するというNPTの基本性格を持ち出し、再検討会議で何を合意しようと条約そのものを守ればいいと主張。「核軍縮に過度に焦点をあてれば、条約の核不拡散条項に注意が向かなくなる」と述べ、核軍縮・廃絶を重視する非核諸国を非難しました。

 自国に都合のよい一九九五年の再検討会議でのNPT無期限延長決定は絶対視しながら、不都合な決定を無視する米国の姿勢に、非核諸国は怒りを募らせています。

 会議は、米国の新核戦略という根本問題に批判が集中しない限り、事態打開の道はないことを示しました。(坂口明)


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