2005年5月22日(日)「しんぶん赤旗」

これからの時代と世界のこと、学問のこと

京大・新入生歓迎講演会で 不破議長語る


 日本共産党の不破哲三議長を迎え、京都大学で二十一日開かれた新入生歓迎講演会。「これからの時代と世界のこと、学問のこと」と題して、不破さんが参加者と考えたものは――。


激動の時代、自然も社会も全体像を自分のものに

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講演する不破哲三議長=21日、京都市・京都大学
 冒頭、「京大の門をくぐったのは二度目です」。十八年前、科学対談のために物理学者の先輩・町田茂さんを訪問した思い出を振り返った不破さんは、「みなさんにお会いすると、自分が旧制高校に入学した当時を思い出します」とのべ、戦後直後の激動・混迷する時代にマルクスの理論を学び、日本共産党を選んだ自分の青年時代を語りました。

 「いまは確かに時代は違いますが、共通点もあります。それは、日本と世界が新しい時代に向かう激動のとば口にきているということです」と語った不破さん。まず「大学で選ぶ学問分野や卒業後の道にはいろいろあろうが、自然についても、社会についても、その全体像を自分のものにしていく努力をぜひかかげてほしい」とアドバイスしました。

 そして、自然の全体像をどうつかむかの問題について、自分が若い時代に読んで印象深く残った本をあげながら、星と宇宙、素粒子、遺伝子と生命の研究など二十世紀後半の自然科学の大変革を紹介し、「唯物論」と「弁証法」というキーワードがいきいきと貫かれていることを明らかにしました。

日本社会が直面する「二つの矛盾」とは

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不破哲三議長の講演を聞く学生たち=21日、京都市・京都大学
 社会の全体像をどうつかむかについて、自らの少年時代の経験もふりかえって、「社会を不動のものととらえる」見方をいましめました。そして、日本社会が直面する「二つの矛盾」―(1)世界資本主義のなかでも政治的、経済的に異常な特質を持っている、(2)世界資本主義そのものが耐用年数がつき、その存続の是非を問われる時代に入りつつある―を豊富な具体的事例で解き明かしました。

 なかでも、世界からみた日本社会の異常な特質に目をむけ、(1)過去の侵略戦争を「正しかった」とする政治の潮流が大手をふり、政府も同じ立場にたっている世界で唯一の国だということ、(2)もっぱら「アメリカの窓」から世界を見ている唯一の国だということ、(3)国民の生活と権利をまもるルールが世界でもっとも弱いこと―の三つの角度から解明しました。

 また、資本主義の「二十一世紀的な矛盾」として、地球環境の破壊と南北問題をあげ、ラテンアメリカで資本主義の枠内から抜け出す独自の探究がはじまっていることを紹介しました。

世界で注目集めるマルクス――その「科学の目」で

 こうした社会の現実を正面からとらえ、解決するための理論的な指針があるかと問いかけた不破さん。「私はマルクスを推薦する」と答え、「マルクスは人間社会の全体像を『科学の目』ではじめて描きだした人物で、“自分はマルクス嫌い”と思っている人でも、実は、社会にたいする見方では、マルクスの影響を大きく受けている」と語りました。不破さんが、いまの世界で、あらためてマルクスに注目が集まっていることを、アメリカ、フランス、イギリスなどの実情をあげて説明すると、驚きの声があがりました。

 つづいて、「マルクスの読み方」に移り、“マルクスをマルクス自身の歴史のなかで読む”読み方をアドバイスしました。

日本共産党綱領を今後の日本と世界考える一つの足場にしてほしい

 昨年改定した日本共産党の綱領は、日本社会の「二つの矛盾」を解決する道を、マルクスの「科学の目」を指針に探究したものだと紹介し、「私たちの綱領を、日本の過去、現在、将来、そして、今後の世界を考える一つの足場として、ぜひ読んでいただきたい」と訴えました。

 最後に不破さんは、「あなたがたが、これから自分の生きてゆく方向を問題にするとき、日本と世界のこれからについて、また学問の問題について、こういうことを考えている政党が日本で活動していること、そしてこの党は、日本の未来をになう若い人たちが自分の人生を社会を変える仕事に結びつけてゆくことを心から望み、歓迎していること、このことをぜひ頭においてほしい」と呼びかけました。

大学の学費がこんなに高い国はない

 講演のなかで「カローシ(過労死)」「単身赴任」「サービス残業」などという日本独特の社会現象が日本語のまま世界を走るという日本的搾取のひどさを告発した不破さん。その背景に大企業の利潤第一主義が、社会の規制を受けないで野放しになっていることがあると指摘しました。

 こうしたルールのなさは企業だけでなく、予算の使い方の逆立ちにもあらわれています。大学生活にかかわるその一例として不破さんは、文部科学省調査による大学生の学費の国際比較(『教育指標の国際比較』2005年度版)をとりあげました。

 それによると、日本の私立の初年度納付金は百三十万二千二百円、国立は八十一万七千八百円。

 アメリカは州立で四十一万三千円、私立は百七十九万円六千円ですが、学生の73%は州立です。

 イギリスは国立で二十一万五千円(私立は一校だけ)。

 フランスは国立で一万九千円。ほとんどが国立で無償制です。

 ドイツもほとんど州立で負担は一万六千三百円。これは公共交通機関利用のための学生パス代です。

 これら欧米諸国では奨学金も「貸与制」ではなく、「給付制」が基本となっています。

 不破さんは「同じ資本主義国でもこれだけ違う。こうした教育費の国際比較を自分で発表しながら問題ありとも思わないのが日本の政治だ」と、その転換の必要性を訴えました。



寄せられた感想から

 講演に寄せられた感想のなかから一部を紹介します。

 「社会の全体像をつかむ重要性について教えていただき、これからの学生生活のなかで、いろいろな分野を含めて勉強していこうと思うようになりました」(京都大一年・男・看板とビラを見て参加)

 「一流の論者の話を聞くことは本当に役立つと実感しました。正直、大学で何から学問を始めるかわからない状態でしたが、そこにも道筋が与えられたような気がします」(京都大一年・男・ビラを見て参加)

 「大変勉強になりました。私はマルクスの著書を正面から読んだことはないのですが、さらに勉強してみたいと思います」(京都大四年・男・知人から聞いて参加)

 「マルクスの名前を聞くのは初めてだったので、最後のお話は難しかったです。私は環境問題に興味があるので、全体像をつかむというのは本当に大切だと思いました」(京都精華大一年・女・知人から聞いて参加)

 「今日の大学での学問は高度に専門分化しており、社会や自然を全体像で法則的、発展的にとらえることを困難にしているように思う。弁証法を学びたい。教えていきたい」(立命館大四年・男・知人から聞いて参加)

 「今回お話のなかで、環境問題と資本主義のつながりがわかりました。アメリカ中心の日本をもっと世界の視点から見てみたいので、留学したときのテーマに掲げてみようと思います」(京都外国語大二年・女・知人から聞いて参加)


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