2005年5月20日(金)「しんぶん赤旗」

私服で乗務を監視

事故後も運転士に圧力

ビデオで隠し撮りまで

JR西日本


 福知山線の列車脱線事故を起こしたJR西日本で、管理職指導員が私服で列車に乗り込んで客を装って背後から運転士をこまかくチェックする行為が事故後も広島支社でおこなわれていたことが関係者の話でわかりました。こうした「監視」の結果、「日勤教育」という名前の“いじめ教育”もおこなわれたことが問題になっており、同社の体質があらためて問われます。

 運転士の二十歩健二さん(45)=全日本建設交運一般労働組合広島鉄道地方本部副執行委員長=は、今回の事故後の今月上旬、「私服」の三人に見張られながら運転しました。

複数人の場合も

 「私服で監視されるのはよくある。顔でわかるし、あとで指摘される場合もある。複数監視も慣れてしまったが、最初は驚いた。一人目が途中駅で降りると二人目が来る。二人目が去ってやれやれと思ったら三人目が…といった具合。その場で指摘するならともかく、後になって摘発され、ブレーキのタイミングや、指さし確認、喚呼での指の伸び方、角度、声量など細かく追及される。これでは運転士も見張られていないか、逆チェックするようになり、プレッシャーが付きまとう。かえって安全運転に支障が出る」(二十歩さん)

 広島支社の運転士、西海信利さん(45)は、私服による監視の結果、運転室の施錠忘れや信号喚呼の声量が小さかったことを理由に二〇〇二年に処分を受けました。

 「ボーナス五万円と昇給四分の一カット。一カ月の車両清掃を義務付ける日勤教育を受けた。現場所長ら五人から尋問され、『病院でも行くか』『いい先生紹介しよか』などとののしられた」と語ります。

「今後も続ける」

 線路保線業務のある労働者は昨夏、ほかの数人とともにビデオで隠し撮りされていました。労働者は線路に立ち入る際、列車が来る方向の注視、指さし確認、喚呼といった基本動作が義務付けられています。

 「私が一回、ほかの同僚も二、三人撮られた。基本動作自体は、集中力を高める有効なもの。十分にできていないのなら、その場で注意すればいい。なぜビデオで隠し撮りし、後々になって追及するのか」と批判します。

 山陽本線八本松駅でも数年前、当時の車掌区長ら数人が車からビデオで列車内の車掌を撮影していました。国鉄労働組合広島地方本部が抗議し、やめさせても、現場責任者が変わると再開しそうな動きが出るなど完全な解決には至っていません。

 この問題について、JR西日本広島支社広報は「私服による添乗、指導はこれまで行ってきた。先月二十五日前後は実施できない事情があったが、当社としては必要な指導だと考えているので今後も状況に応じて続けて行く」と回答しました。


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