2005年5月20日(金)「しんぶん赤旗」

核実験 島民避難させず

60年代仏領ポリネシア

仏反核団体が文書暴露


 【パリ=浅田信幸】フランスの反核団体である「平和と紛争に関する文献・調査センター」(CDRPC=本部リヨン)はこのほど、一九六〇年代後半の南太平洋仏領ポリネシアにおける大気圏核爆発実験にあたりフランス当局が人体への危険を認識しながら島民を避難させなかった事実を示す軍事機密文書を暴露しました。

 同センターによると、放射線医学安全保障合同機関の六六年の文書は「(核)爆発実験に先立つガンビール諸島住民の予防的避難は政治的、心理的理由から排除される」と指摘。別の報告は「最小限の(放射性)降下物でも住民により吸収される量は最低基準を上回る」と予測しています。

 ガンビエ諸島はポリネシアを構成するトゥアモトゥ列島の東南端に位置し、六六年のムルロア環礁などでの一連の大気圏核爆発実験の風下にあたりました。

 ブルーノ・バリヨCDRPC所長は「核実験にかかわった機関は情報を操作し、環境、実験要員、住民に対する影響を小さく見せようとした」と仏紙に指摘。放射性降下物による汚染は旧ソ連のチェルノブイリ原発事故による立ち入り禁止区域の百四十二倍に相当するとしています。

 ポリネシアの反核組織ムルロア・タトゥ協会は十七日、この暴露が「ポリネシア住民にショックを与えている」とし、「住民を無知な状態に置き」「実験要員と住民の保護よりも核実験計画の遂行を優先させた」とする非難声明を発表しました。

 同協会のロラン・オルダム会長は「核実験にかんするすべての事実の公表とともに正義を求める」と表明、「核実験による健康への影響評価を可能にするすべての情報と文書の公開」を求める要望書を仏国防省に提出しました。

 仏核実験に当たって要員や住民の健康被害が軽視された問題では、核実験退役軍人協会とムルロア・タトゥ協会の告発を受けてパリの予審判事が昨年九月、「過失致死」と「過失傷害」の容疑で捜査を開始しています。


 仏の核実験 フランスは、一九六〇年から九六年まで五十回の大気圏内実験を含め計百九十八回の核爆発実験を行いました。うちわけは、六〇年から六六年初めまでアルジェリアのサハラ砂漠で十七回、六六年から九六年には仏領ポリネシアのムルロア環礁とファンガトファ環礁で百八十一回。このほかムルロア環礁で十二回の未臨界実験を行っています。二〇〇四年八月現在の保有核弾頭数は三百四十八発といわれます。


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