2005年5月13日(金)「しんぶん赤旗」
途上国の権利を強調
南米・アラブ首脳会議閉幕
「ブラジリア宣言」採択
![]() 11日、南米・アラブ首脳会議後に記者会見するトレド・ペルー大統領(前列左端)ら(松島良尚撮影) |
【ブラジリア=松島良尚】ブラジルの首都ブラジリアで開かれていた南米十二カ国とアラブ連盟二十一カ国・パレスチナ自治政府との初の首脳会議は十一日、「ブラジリア宣言」を採択して閉会しました。
「宣言」は十三章百二項目。平和と安全保障問題を含む両地域間協力と多国間関係の強化、文化、経済協力、国際貿易、国際金融システムなど広範な問題が盛り込まれています。
全体の基調は、多国間主義の強調、文明間の対話と文化交流の重要性、発展途上国の正当な権利を確立するための国際機関の民主化、南南協力の推進など。注目されていたテロ問題では、テロとのたたかいを強調するとともに、国際的合法性にもとづいて、国家と国民が外国による占領に抵抗する権利を明記しました。
「宣言」は、南米・アラブ諸国首脳会議を今後も開いて協力を強めていくことを確認。第二回首脳会議は二〇〇八年にモロッコで開催される予定です。それまでに外相会議や分野ごとの閣僚級会議も開くと明記しています。
ブラジルのルラ大統領は閉会あいさつで、大統領の残り任期はすでに二年を切ったが、引き続き国際政治に関与していくと強調しました。途上国の社会経済発展は一国だけでは限度があり、途上国がまとまって取り組んでこそ発展が可能だとの認識を示しました。
閉会後の記者会見では、アラブ諸国の「民主主義」問題に関連して、「宣言」の中に民主主義の重要性を強調する項目がないのはなぜかという質問が出されました。ルラ大統領は、「他の人の民主主義の概念を尊重せずに、自分の理解している民主主義の概念をこうした文書で明示しようとするなら、それは民主主義の欠如になってしまう」とのべました。
今回の首脳会議については、米政府の対応が注目されました。米政府はオブザーバー参加を希望、しかし、ブラジルが拒否したと報じられています。
ブラジリア宣言の骨子
南米・アラブ諸国首脳会議で十一日に採択された「ブラジリア宣言」の骨子は次の通りです。(ブラジリア=松島良尚)
一、世界の平和、安全を推進するため、両地域は多国間主義、国際法にもとづいて協力する。あらゆる紛争と国際問題は、国際法と国連憲章にもとづいて平和的に解決する。国連決議は選別することなく履行されねばならない。
一、諸国の平和的共存にとって相互の信頼、理解を深めることが重要。寛容と包含の世界を構築するうえで文明間の文化交流と対話が必要。
一、核兵器が完全にない世界をつくりあげるうえで、非核兵器地帯条約が重要。核軍縮がすすんでいないことを憂慮。中東での非核地帯の確立を求める。
一、中東は、国連安保理決議にもとづいて、持続性のある公正、完全な平和に到達する必要がある。一九六七年当時の国境線にもとづくパレスチナ国家の創設とイスラエルとの平和的共存、一九六七年六月までに占領されたすべてのアラブ諸国領土からのイスラエルの撤退を求める。
一、イラクの統一、主権、独立を尊重し、内部問題に干渉しない。イラク国民の意思を尊重する。シリアに対する米政府の一方的な制裁を懸念。
一、国連と地域機関のもとでの国際協力を通じ、テロとたたかう。国家と国民には、国際的合法性と国際人権法にもとづいて外国による占領に抵抗する権利がある。
一、国民間の統合や経済活動にとって文化交流はますます重要。両地域の文学の翻訳、アラブ・南米図書館の設立などをすすめる。
一、経済や貿易の分野で相互の立場を調整する。数十年来の貿易拡大によっても途上国は公正な恩恵を得られなかった。多国間、透明性のある貿易システム確立が重要。
一、途上国の努力を支援するよう国際金融システムの構造を改革する。
一、南南協力は低コストで効果の高いメカニズムであり、途上国の経済成長を促進する多国間貿易システムを強力に補完する。
一、世界の飢餓と貧困を憂慮。この問題の解決は、途上国、先進国双方の安全と安定にとっても不可欠。


