2005年5月9日(月)「しんぶん赤旗」

シリーズ 9条改憲 ここが問題

推進するのは侵略戦争美化勢力


 九条改憲の動きとの関係で見逃せないのは、これが、歴史をゆがめた侵略戦争美化論の台頭と結びついていることです。

自民起草委員長は「神の国」の森氏

 自民党の新憲法起草委員会の委員長を務めるのは森喜朗前首相です。首相在任中に「日本は天皇を中心にした神の国」と発言し、戦前「神の国」だからとアジア侵略を正当化した思想がそのまま残っていることを示しました。侵略戦争であるかどうか問われても、「みんなで判断すること」として認めませんでした。

 これまでの経歴をみても、右翼改憲団体の日本会議を全面的に支援する目的でつくられた「日本会議国会議員懇談会」(一九九七年発足)の発起人をつとめたほか、侵略戦争美化の『大東亜戦争の総括』を出版した自民党「歴史・検討委員会」のメンバーでもありました。

 新憲法起草委員会の小委員長の中には「みんなで靖国神社を参拝する国会議員の会」の会長・綿貫民輔衆院議員(前議長)もいます。

NHK番組介入の安倍・中川氏も

 新憲法起草委の「前文」小委員長代理をつとめ、若手のなかで改憲論を主導する安倍晋三幹事長代理は、「歴史・検討委員会」のメンバーでした。「ドイツの犯罪と日本の戦争犯罪は違う。…焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くすという三光作戦を日本は展開したといっているが、これはまったくのウソ」(四月二十三日民放番組)などと侵略戦争擁護の発言をくりかえしています。

 安倍氏は、「歴史・検討委員会」のもとになった「終戦国会議員連盟」の事務局次長をつとめました。また、「日本の前途と歴史教科書問題を考える若手議員の会」(当時)の事務局長をつとめ、歴史教科書を偏向だと激しく攻撃しました。同会は、従軍慰安婦問題で旧日本軍と政府の関与を認めた官房長官談話(九七年)の撤回を要求。最近では、二〇〇一年放映の戦時性暴力を裁く女性国際法廷を扱ったNHK番組に、安倍氏ら同会メンバーが政治介入した事実も明らかになっています。

 安倍氏とともに番組介入が明らかになった中川昭一経産相は、「若手議員の会」の会長(当時)。日本会議国会議員懇談会でも、麻生太郎会長(現総務相)と会長代理を務めました(現会長は平沼赳夫前経産相)。

 このように、九条改憲の中心的役割をになっている政治家の多くが、首相の靖国参拝を肯定したり、歴史をわい曲した「つくる会」教科書を無理やりおしつけるなど、侵略戦争を肯定・美化する先頭にたっているのです。(資料1)

反省が戦後国際社会の出発点

 かつての侵略戦争を「正しい戦争だった」と主張したり、歴史の見直しを求めたりする動きは、世界にも例がありません。侵略戦争を認めることは戦後国際社会の出発点・土台だったからです。

 憲法九条も、三百十万人の日本国民とともに、アジアで二千万人の犠牲者を出した侵略戦争への反省と不可分に結びついた条文です(資料2)。中国の北京市郊外にある抗日戦争記念館には、憲法九条の拡大写真が掲げられ、「一九四七年、日本が制定した新憲法第二章第九条」との説明がついています。九条は日本だけでなく、アジアや世界の共有財産ともいうべき存在になっているのです(資料3)。

 「憲法九条を放棄することは、侵略戦争への反省を『放棄』することであり、アジアと世界にたいする不戦の誓い―国際公約を破りすてることになります。それは、日本の国際的信頼のはかりしれない失墜となるでしょう」(日本共産党の第三回中央委員会総会での志位和夫委員長の報告)


改憲派議員の歴史観 資料1

森前首相

 「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを、国民のみなさんにしっかり承知していただく」(二〇〇〇年五月十五日、神道政治連盟国会議員懇談会)

 「教育勅語のなかに、やはりまじめな一つの真理というものはあったと思いますので、そういうものもすべて廃止してしまったのがよかったのかどうか…当時なぜこうしたものを排除したのか」(同年四月二十四日、衆院予算委)

 「私は、日本が侵略戦争をしたかどうかということは、これは歴史のなかでみんなが判断していくべきことだと思っている」(同年四月二十四日、衆院予算委)

自民・安倍氏

 「ナチスドイツがやったことの意図、中身と規模と我が国の戦争は全く別のもの」(自民党「歴史・検討委員会」の『大東亜戦争の総括』)

 「五十年前六十年前にこの国の人達がどうしてああいう判断を下したのか…あの時には、あの時のわが国の主張があった」(共著『「保守革命」宣言』)

 「靖国神社を直接、軍国主義と結びつけるのは見当外れな意見と言えましょう」「A級戦犯が合祀(ごうし)をされているから、参拝してはだめだ、けしからん人間だと国が判断するというのは、きわめておかしなことです」(『この国を守る決意』)


侵略戦争反省が土台 資料2

 「日本は好戦国である、何時再軍備をなして復讐(しゅう)戦をして世界の平和を脅かさないとも分からないというのが、日本に対する大なる疑惑であり、又誤解であります。…この疑惑は…全然根柢(こんてい)のない疑惑とも言われない節が、既往の歴史を考えて見ますると、多々あるのであります。ゆえに我が国に於(おい)てはいかなる名義を以てしても交戦権はまず第一に、自ら進んで放棄する、放棄することによつて全世界の平和の確立の基礎を成す、全世界の平和愛好国の先頭に立つて、世界の平和確立に貢献する決意を、まずこの憲法において表明したいと思うのであります」(吉田茂首相、一九四六年六月二十六日、衆院本会議)

 「満州事変以来、日本の表裏、言行不一致の侵略的行動については全世界の人心を極度に不安ならしめ、かつ全世界の信頼を失つてゐることは大東亜戦争で日本がまつたく孤立したことで明瞭(りょう)である。従つて将来国際関係の仲間入りをするためには日本は真に平和を愛し絶対に侵略を行はないと言う表裏一致した誠心のこもつた言動をもつて世界の信頼を恢復(かいふく)せねばならない」(三笠宮崇仁枢密顧問官、一九四六年、枢密院本会議)


9条は世界の共有財産 資料3

 『国際法からみたイラク戦争』の著者クリストファー・ウィラマントリ氏(昨年の原水爆禁止世界大会に参加して)

 「もし今、九条を意図的に変更しようとするならば、それは、日本がおこなった戦争放棄の宣言を自ら投げ捨てることを、全世界とりわけ域内の近隣諸国に告知することを意味するといえるでしょう。日本国憲法第九条は、大国が交戦権を放棄したという点で傑出しています。その憲法は、世界でも数少ない軍事力否定の素晴らしい憲法であり、国際法学者の観点からももっと多くの国がこのような憲法を持つべきだと考えます」(「しんぶん赤旗」〇四年八月二十二日付)

 国連ミレニアム・フォーラムの「平和、安全保障、軍縮」グループの報告書

 「すべての国が日本国憲法第九条にのべられる戦争放棄の原則を自国の憲法において採用すること」


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