2005年5月5日(木)「しんぶん赤旗」

教育研究に役立つ評価の探求

大学評価学会が議論


 昨年四月から、国立大学が法人化によって業績評価を国から受けるとともに、すべての国公私立大学が、法律による第三者評価を義務付けられました。こうした大学評価をめぐって大学関係者の中でさまざまな議論が交わされています。

 なかでも、本来の大学評価のあり様を学問的対象にする学会として昨年設立された「大学評価学会」での議論が注目されます。この学会では、現在進められている大学評価は経済的視点が一面的に強調されているとして、国際的な動向をふまえ、「大学とは何か」「誰のための、何のための評価か」を念頭においた本来の評価のあり方が議論されています。

 「大学評価学会」が今春開いた第二回全国大会では、今すすめられている大学評価が、はたして教育研究の向上につながるかどうかが熱心な議論となりました。

 国立大学協会会長の相澤益男・東工大学長は「国立大学法人を評価する総務省におかれた独立行政法人評価委員会は、合理化、効率化だけで、なんら大学の質を向上するという視点がない。中期目標の達成度評価をもって資源配分に反映されるので大きな問題」と指摘しました。ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏は、「国立大の法人化によって基礎科学は冷や飯を食うのではないか」と危ぐを述べ、利益を生まない基礎科学は国が責任を持って進めるべきであり、基礎科学の分野で実績を上げた研究者で構成する委員会をつくり、そこで基礎科学の研究費配分を決めるべきだと訴えました。

 認証評価機関()である大学基準協会、大学評価・学位授与機構などの関係者からは、教育研究の向上につながる評価となるよう努力している報告がありました。他方で、評価が政府による教育研究費の配分に反映されることから「改革しないと評価されない、予算ももらえない」という強迫観念が大学にまん延している実態や、イギリスでは七段階評価にもとづき研究費も配分するため、低い評価を受けた学科が取りつぶされているとの報告もありました。

 また、「評価を公表することでその大学に不利益を与えることにならないか」という点にも議論が集中しました。アメリカでは評価機関が大学側から訴えられた事例もあるといいます。「評価機関が異議申し立てを受けて評価を変えた場合、どう説明責任をはたすのか」という意見もあり、公表する意味の重さも感じさせられます。

 「大学評価学会」では、評価をする側と受ける側、研究分野をこえた研究者や、大学教職員、院生、学生などが、対等な立場で議論を交わしています。大学評価をめぐって「学問の自由」を守り、「大学の自治」を発展させるための大学人による本格的な取り組みが始まっています。

 (土井誠)


 認証評価機関=文部科学大臣から認証を受けた評価機関。二〇〇二年学校教育法改正は、大学に二〇〇四年度からこの機関の評価を七年ごとに受けることを義務づけました。


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