2005年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

列島だより

平和ねがう 市民のために

身近な場所で体験できます


 3日は憲法記念日。310万人の日本国民、2000万人を超えるアジア諸国民の犠牲者を出した戦争の反省に立ち、二度と戦争をしないと誓った日本国憲法や平和について考える機会です。

 そうした体験のできる場所として、埼玉県東松山市にある埼玉県平和資料館と、姫路市平和資料館―東西2つの施設を紹介します。


戦時下の授業、防空壕の中…

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授業中の教室にいると突然、「空襲警報」が…=埼玉県平和資料館

 一九九三年にオープンした埼玉県平和資料館。大東文化大学や子ども自然動物園などがある比企丘陵の新緑のなかにあります。県直営の平和資料館は、沖縄とここだけです。同館は「平和のための戦争展」など草の根平和運動や日本共産党県議団から建設の要望が出され、九〇年には県の計画素案がまとまり、関係諸団体が参加した意見交換会を開くなどを経て畑革新県政のもと具体化されたもの。

 館内に入ると動く歩道のタイムトンネルがあり、トンネルの左右、天井のモニターに当時の映像が映し出され、やがて昭和初期にタイムスリップ。小学校の教室でイスに座ると、戦時下の修身(道徳)の授業が映像で見られます。その授業中に「空襲警報」があり、見学者が隣にある防空壕(ごう)に逃げこむと、爆弾の振動、機銃掃射の音、光や炎の色も。擬似体験型で、できるだけビジュアルにわかるように工夫されています。

 常設展示室は、まず「戦争への道」と銘打ち、不況と満蒙開拓、強まる軍国主義、戦時体制とくらしの三コーナーで展示。「太平洋戦争」は、埼玉と軍事施設、子どもたちと戦場、埼玉の空襲など四つのコーナー。風船爆弾や焼夷(しょうい)弾の模型、広島・長崎の原爆瓦や悲惨な沖縄戦の様子がわかるさびた銃、カミソリや写真なども展示されています。

 展示で力がこもるのは、終戦前日の一九四五年(昭和二十年)八月十四日夜の熊谷空襲。午後十一時半から約一時間、八十二機のB29が六発の大型爆弾と八千四十九発(合計五百八十一トン)の焼夷弾が投下され市街地の74%を焼失、全戸数の四割が被害にあい、二百六十六人が死亡した状況を写真その他で詳しく伝えています。

 アニメ「最後の空襲くまがや」「青い目の人形物語」の上映もあります。

 取材に訪ねた日には、県内のハイキングサークルの人たち約三十人が来訪。その一員の行田市の女性(72)は、熊谷空襲の体験者。「父親に『そっちは危ない、こっちへ行け』と言われ、必死で逃げた。その後しばらくの間は地面に焼夷弾が突き刺さっていた」と当時のことを話していました。周りからは「子どもたちを連れて、また来たいね」の声も。

 資料の検索、図書の閲覧、ビデオ鑑賞のマルチライブラリーなども充実。高さ四十二メートルの展望塔最上階からの景色も楽しめます。(孝岡 楚田)

埼玉県平和資料館

 所在地・埼玉県東松山市岩殿241の113。

 交通・東武東上線高坂駅から川越観光バス「大東文化大前」下車徒歩5分。入館料・一般100円、高・大学生50円。開館時間・午前9時〜午後4時半(入館は4時まで)。休館日・月曜。電話0493(35)4111


空襲の恐怖 ジオラマで再現

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姫路市平和資料館玄関で(左から)井上和郎市議と加古雄三館長

 姫路市平和資料館は市役所の西、姫路城をのぞむ手柄山の山頂、手柄山中央公園に一九九六年(平成八年)四月に開館しました。

 姫路市は一九四五年(昭和二十年)六月二十二日、川西航空機姫路製作所(現京口団地周辺)を中心とする爆弾攻撃と七月三日夜から四日未明にかけて焼夷弾(しょういだん)攻撃で市街地の約40%が焼失するなど壊滅的な被害を受けました。平和資料館は、戦争の惨禍と平和の尊さを後世に伝え、平和に対する意識を高め、平和な社会の発展に寄与するため、開設されたもの。すぐ隣には太平洋戦全国戦災都市空爆者慰霊塔があります。

 設立趣旨は姫路市の「平和都市宣言」「非核平和都市宣言」に基づくもの。とくに、(1)空襲体験の継承の場として、姫路の空襲による被災等に関する資料・文書・映像等を主体とした展示(2)平和教育に関する学習・教育の場として活用を図るとともに、戦争の悲惨さと平和の尊さについて啓発する施設(3)調査・研究の場として、展示と資料収集や学習指導などを充実させるための調査・研究施設機能を整備する―ことが目的。

 空襲や市民生活の様子などが写真パネルや展示品、模型を通してリアルに再現され、映像、音響、振動、ジオラマ(透視画、風景画などに光をあて穴からのぞき見る装置)で空襲を再現した疑似体験装置で戦争の恐ろしさを体験できます。開催中の春季企画展「太平洋戦争下の子どもたちのくらし」は七月三日までです。

 日本共産党の井上和郎市議は先日、同資料館を訪問し、加古雄三資料館長と懇談しました。加古館長は「終戦六十周年の年であり資料館も新たなスタートです。今年のテーマは六十年前の子どもの暮らしぶりを紹介し、今との比較で『戦争下の学校生活』『遊びに表れた戦時色』『戦争協力にかりたてられる日々』『前線に向かう少国民』『空襲と子どもたち』『ビデオコーナー』など平和を学習してもらうことです。市立で平和の単独資料館は全国でも珍しく、この間も四国から団体で見学に来られました」と語りました。

 井上市議は「平和憲法で悲惨な戦争を繰り返さないというコーナーがありました。学徒出陣やひめゆり部隊の手記も借りて出展され感動した」といいます。

 姫路には陸上自衛隊中部方面隊第三師団駐屯地がありイラクへ姫路から五月にも派遣されます。市議団は三月議会で姫路市民から戦死者を出すなと要求しましたが、憲法記念日にあたり「戦後六十年の年にふさわしく平和憲法を守る運動を大きく広げましょう」とよびかけています。

姫路市平和資料館

 所在地・兵庫県姫路市西延末475。

 交通・JR姫路駅南口から市バス「手柄山中央公園」下車徒歩3分。入館料・一般200円、小・中学生50円開館時間・午前9時半〜午後4時半。休館日・月曜、祝日の翌日と12月28日〜1月5日。電話0792(91)2525


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