2005年4月23日(土)「しんぶん赤旗」

大型店の撤退

地域に大きな打撃

迫られるルールづくり

まちづくりシンポから


 大型店の撤退・閉鎖がつづいています。先月開かれた「まちづくりと大型店問題シンポ&運動交流会」(全商連、全労連、商サ連による大型店問題連絡会主催)で、大型店撤退のルールを設けるべきだとする提唱が参加者の注目を引きました。



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発言する井上芳恵・尚絅短期大学講師

 調査研究に基づく提唱をしたのは尚絅(しょうけい)短期大学(熊本市)の井上芳恵(いのうえ・よしえ)講師。九州・熊本県での相次ぐ大型店撤退を目の当たりにし、調査研究した結果です。

 九州では、二〇〇一年、大手スーパーマイカルの地方子会社マイカル九州や地方資本のスーパー寿屋(ことぶきや、本社熊本市)などスーパーチェーンの倒産が相次ぎました。

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大型店問題について提案や交流がされた「まちづくりと大型店問題シンポ&運動交流会」=3月30日、東京都内

再開まで長期化

 寿屋の場合だけでも正社員、パート合わせ一万人近くの従業員はいったん全員解雇。地域を中心とする取引先納入業者も納入先を喪失。大型店内にテナントとして入居していた地域商業者も営業が困難になるなど、地域経済に大きな打撃を与えました。

 井上さんらの調査では、不況のなかで、閉鎖店が再開するまでに長い期間がかかっています。

 寿屋の倒産では、倒産から二年近くたった〇三年十月の時点でも、商業施設として再開できていない店舗が全体の約15%に当たる二十店でした。

 全国調査(二〇〇二年一月実施)でも、把握できた撤退事例六百三十四例のうち、約三割で跡地が未活用のままでした。

 特に市中心部での営業再開が困難になっています。寿屋の倒産では、未再開店二十店のうち十一店は中心市街地活性化基本計画の域内でした。全国調査でも、駅周辺や商店街周辺の再活用の遅れが目立ちます。

 中心市街地での大型店閉鎖がまちの活気を失わせ、自治体による活性化努力の足かせとなっています。

 九州では、倒産した寿屋やマイカル子会社の店舗をイオンなどの本州企業が買い取りや経営支援をし、これを足掛かりに九州一円で出店競争が激化しています。

 熊本県八代市や熊本市では店舗面積二万―三万平方メートルの巨大店が次々に出店または出店を予定。熊本市隣接の町では店舗面積六万平方メートルという巨艦店をイオンが出す計画です。

郊外から撤退も

 消費人口などに比して巨大すぎるこれら大型店のうち、どれかが立ち行かなくなるのは目に見えていると井上さんは指摘します。「郊外大型店の大量撤退が問題になる時代がくるでしょう」。

 井上さんは大型店撤退の問題点を次のようにまとめています。

 (1)大型店撤退は地域住民や自治体に大きな影響をもたらすにもかかわらず、出店に比べて法制度による対応はほとんどない(2)撤退決定後に住民や自治体などが要望や陳情を出しても、実現に至らない(3)跡地利用が民間で進まない場合、行政が関与し資金投入などをする事例も発生―などです。

 これに対し井上さんは「経営悪化の際の経営再建や撤退後の跡地利用計画などに地域組織や住民、地方自治体が関与できるようにすることが必要」といいます。

 そのために、十分な期日をもたせた撤退の事前通知などを求めます。

 また、出店時に“供託金”や“撤退保証金”のような、撤退に備えた資金の提出を求めてもよいのではないかとして、こういいます。

 「大型店の出店で、まちのあり方や産業・商業施設の配置などの計画に基づく規制・誘導が必要なように、撤退についても制度・手続きなど何らかのルールが必要です」


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