2005年4月23日(土)「しんぶん赤旗」

原水協の「各国政府への提言」


 日本原水協が二十二日に発表した「各国政府への提言」(大要)を紹介します。


 第七回核不拡散条約(NPT)再検討会議が、広島・長崎の被爆から六十年の年に開催される。二〇世紀の最後の年、二〇〇〇年五月の前回再検討会議では、「自国の核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を、核保有国をふくめ一致して合意した。

 世界の反核平和運動は、「いま、核兵器の廃絶を」を共通の目標に、署名、集会、行進など多様な行動を積み重ねている。広島・長崎両市をはじめ世界の多くの自治体が、核兵器廃絶条約交渉の開始を求めて行動している。非核兵器地帯の参加国をはじめ、世界中の多くの国の政府が、NGOとも連帯しながら、再検討会議を実りあるものにしようと努力を強めている。

 日本の原水爆禁止運動は、被爆者とともに、広島・長崎の惨禍を伝え、核戦争阻止、核兵器廃絶の世論と運動を世界に広げるために努力を重ねてきた。これらの目標を達成することは、いまNGO、自治体、政府の立場の違いをこえた、世界の圧倒的多数の共通の声となっている。

 今回の会議が、この世界の流れへの逆流をこえ、二〇〇〇年の合意を具体的に推進することによって、核兵器のない世界への歩みを前進させることは、世界平和と人類の希望ある未来のための責務である。そのために世界のすべての政府、とりわけ核保有国の決断を強く求め、以下を提案する。

 一、核兵器廃絶の合意を守り、実行を

 われわれは、核保有国が「自国の核兵器の完全廃絶を達成する」との約束をまもり、再検討会議として、この順守と履行を確認することがまず重要だと確信している。再検討会議の準備委員会で核保有国は、自らは軍縮義務を守っているとして、会議の議題を「不拡散」問題に絞ることを主張してきた。

 しかし世界には、なお三万発にのぼる核兵器が蓄積・配備されている。この間、戦略核兵器削減条約(モスクワ条約)が調印されたが、すべて実行されてもなお米ロ両国は数千発の核兵器を保有し、しかも再配備を可能とするものである。そればかりか核保有国の一部は、「テロ」「拡散の危険」を口実に核兵器に新たな役割を与え、通常兵器と組み合わせ、また「使える兵器」を開発し、使用しようという動きを強めている。広島・長崎以後の六十年、人類と文明の存続を脅かし続けているのは、現実に製造され、配備され、いつでも使える状態におかれている核兵器である。核保有国が、非核保有国には核兵器を持たない義務の順守を迫りながら、自らはあくまでも核保有を正当化し、合意した義務の順守を否定し、ほごにするなどということは、法や合意にもとづく国際秩序への逆行である。

 核保有国は、「自国の核兵器完全廃絶の達成」の「約束」を確認し、その実行へ行動を開始すべきである。

 二、核兵器全面禁止条約の実現へ、ただちに行動を

 「約束」の実行の中心目標は、核兵器廃絶の実効ある措置、すなわち核兵器全面禁止条約の実現にむかって行動を進めることである。

 世界の圧倒的多数の国が、非核を宣言し、非核兵器地帯を構成し、国際条約上も核兵器を持たないことを誓約し、実行している。国連総会での決議の採択状況を見れば、この目標を拒絶している国は数カ国にすぎない。拡散問題の焦点にされているいくつかの国も、世界が核兵器廃絶に進むことに同意している。

 核兵器の廃絶こそ拡散を防ぐもっとも確実な保障であり、その確信が二〇〇〇年再検討会議の合意を生み出したのである。これに対し、拡散を自国の膨大な数の核兵器で「抑止」し、脅迫して防ぐ、必要なら使うという政策と行動は、疑惑を捏造して進められたイラク戦争の経過をみるまでもなく、拡散問題の解決に何の役にも立たないばかりか、世界の混乱と無法を拡大する以外の何ものでもない。

 もちろんどのような理由をあげようと、国際社会は新たな核保有国の出現を許してはならない。しかし核保有国が核兵器全面禁止に踏み切り、そのための行動を開始するなら、世界が一致して、より効果的に拡散の懸念に対応できることは明白である。ただちに核兵器全面禁止条約の実現に着手すべきである。

 三、新たな核兵器開発や使用政策の停止と破棄を

 NPTに加わっていない国を含め、すべての核保有国は、核兵器使用につながるいっさいの政策・戦略を停止し、新たな核兵器の研究・開発、配備をただちに停止することを要求する。「拡散の脅威」を強調しつつ、新たな核兵器使用の危険をつくり出す行動こそ、核軍縮、核不拡散の努力を崩壊させかねないものである。また、日本をふくめ核保有国と同盟関係にある国々は、核兵器使用につながるいっさいの政策に加わらず、「核の傘」から離脱すべきである。そうしてこそ、拡散の危険をふくめ、真に核兵器の危険を一掃する立場に立つことが可能となる。

 広島と長崎の被爆から六十年、世界の大勢は核兵器全面禁止の方向へと大きく前進している。第七回再検討会議には、これまでの合意を実行に移し、文字通り核兵器廃絶への転機をつくり出すことが期待されている。われわれは被爆国の運動として、いっそう奮闘することを表明する。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp