2005年4月22日(金)「しんぶん赤旗」
解説
転落死 セガ本社捜索 「ベルトなし」常態化
行政のチェックに穴
利用客を安全ベルトなしでアトラクション遊具に乗せる――。東京・お台場の室内娯楽施設で起きた転落死亡事故の原因はそこにありました。危険な事態がどうしてまかりとおるのでしょうか。
ジェットコースターや原動機付き遊具などの工作物の安全対策は、建築基準法(八八条一項など)で定められています。遊具には安全ベルトなどの装備の設置が義務付けられ、同法にもとづく検査に合格しなければなりません。
しかし、安全装置を使用しなかった場合でも「工作物の安全が確認されていない状態といえるが、実際にどう使うかは建築基準法の適用外」と、国土交通省建築指導課は説明します。
東京都港区によると、同施設を運営するセガは遊具設置の建築確認申請を出し、二〇〇〇年六月二十七日付で確認済証が出ていました。申請書添付の仕様書には、利用客の安全装置として、ショルダー型ハーネスとシートベルトの両方を装着することや、安全装置で身体保持できない場合は利用禁止にするとして申請していました。
港区建築課は「ハード面では、半年に一回、安全装備など設備の法定点検もおこなう」といいます。しかし、法定点検は設備のチェックだけで、実際の運用状況までは把握していませんでした。
今回の死亡事故では、運用マニュアル自体の問題点や、運行管理体制の不備なども明らかになりました。もともと、遊戯施設の運転者や運行管理者を対象にした資格制度はなく、講習会を受けることさえ義務付けられていません。
財団法人日本建築設備・昇降機センターは、事故防止を目的として運転者・運行管理者などを対象に年一回講習会を開いていますが、「講習会への参加状況も年々マンネリになって、大手娯楽施設からの参加がないケースもある」(センター)という実情です。
港区建築課は「安全装置自体の改善も含め、運転マニュアルや連絡体制などの改善を指導していきたい」と話していますが、国や自治体の対応が問われるところです。(宇野龍彦)

