2005年4月18日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

合併 決まったが

福祉・教育…低下どう防ぐ


 全国で政府主導による市町村合併が強力に推し進められています。合併が決まった自治体では、押しつけ合併に伴うさまざまな問題が明らかになり、住民要求を取り上げた日本共産党の運動が始まっています。島根県奥出雲町、岐阜県兼山町からのリポートを紹介します。


指定管理者で民営化の動き 保育所・幼稚園守ろう

3セクを“派遣会社”化

島根・奥出雲町

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 島根県奥出雲町は、旧横田町と旧仁多町が三月三十一日合併してできた、人口一万六千五百人、面積三百七十平方キロの町です。

 旧両町は、人口・面積ともにほぼ同じで、米と和牛生産に力を入れ、仁多米の銘柄で知られるコシヒカリは新潟県魚沼産に匹敵する食味値がある良質米の産地です。日本刀の刃の材料に使われる玉鋼は日本で唯一の生産地であります。

 二〇〇四年四月末に二町法定合併協議会が設立され、役場位置問題で協議が六カ月間空白となったほか、合併期日でも県の強引な合併押しつけに推進派が同調して合併が強行されました。

 結果は、準備期間が少なく、導入した合併電算情報システムが合併当初にすべてが稼働しない状況でした。新町の五十二からなる事務事業についても大部分は合併後に調整するというずさんなものでした。

 旧両町には、日本共産党議員が合わせて三人いて、進行中の合併問題の矛盾を明らかにする郡民報を八回発行しました。無党派の二人の議員も加わり、「出前報告会」と称し、集落五カ所で、合併の矛盾と県の強引な押し付けを報告しました。どの会場にも女性や自治会長の顔があり、民報の果たす役割の大きいことを痛感しました。

 議会でも昨年の三月、六月、九月の三議会に、合併住民投票条例案を無党派議員一人も加わり提案しました。また、今年三月臨時議会には、合併期日住民投票条例を提案しました。提案者以上の賛成者は得られなかったのですが、私たち共産党は住民とともにあることをこれほど実感したことはありませんでした。

 法定合併協議会は、傍聴できる本会議の前段で全員協議会と称して、提案する案件を事前に質疑応答させ、本番は確認の表決が中心の運営がされ、傍聴者から不満と批判が出されました。

 共産党議員団は、合併協議の開示を求める議員連盟をつくり、両町の議員に加入を働きかけました。

 横田、仁多両町は三月七日、両町議会で配置分合にかかわる議案を可決し、合併が決定しました。議会議決が多数で決まると、予想もしていなかったことが分かりました。

 二日後の三月九日、仁多町の第三セクター「仁多振興」を「奥出雲振興」へ社名変更するとともに事業目的に労働者派遣事業を加えました。そして、新町は保育所・幼稚園の嘱託の保育士・助手・臨時職の雇用を廃止し、「奥出雲振興」から職員を各園(所)に派遣しようというのです。

 次に心配されるのは、町立保育所を指定管理者制度による民営化に移行する恐れが大きいことです。

 日本共産党は、住民に働きかけ、新町の保育所・幼稚園を守る呼びかけをしています。(立花利朗前町議)


過疎の進行、新たな税負担

住民利益守る協力可能

岐阜・兼山町 

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 岐阜県兼山町は、人口は千六百八十三人(二〇〇四年四月一日現在)、面積二・六一平方キロです。予算規模は一般財源で年間約十億円。明治二十二年(一八八九年)の町制施行からこれまで、県で唯一、分町・合併が行われませんでした。財政力指数は〇・一九四(三年平均)であり、自主財源に乏しい町といえます。昔は蔵が軒を並べ、商店もあらゆる種類がそろい、近隣から買い物客がこの地に来るほどの盛況でした。しかし、今はその面影はありません。最近では人口は年々減少傾向となっています。経済状況の変ぼうはありましたが、地方交付税制度で住民生活は守られてきました。

 今年の五月、可児市(人口九万七千九百九十人、面積八四・九九平方キロ)に編入飛び地合併する予定です。やはり、地方交付税など財源問題が大きな原動力です。

 町は九カ所の会場で、合併の必要性や、協議会の経過報告などを行いました。そして、中学校の通学が遠い市内の学校になる心配など、いろいろな住民意見が出るようになりました。合併調印の前に、町民有志によって「町民意識調査」の実施を求める署名運動が起きました。二百二十五人の署名(一次分)と請願書が出され、紹介議員に無所属議員とともに日本共産党町議の私も名を連ねました。

 しかし、結果は、紹介議員となった二人以外の議員はこの請願を不採択としてしまいました。町長は公の場でこの運動を立ち上げた町民有志の勇気をたたえていましたが、合併を第一とした議会の結果を最大に尊重し、合併の調印をしました。

 このような経過が示しているのは、国が決めた期日に合わせて、財政力のある市と多少の無理があっても合併するということです。中学校問題は、兼山の主張を最後まで譲らずに、現在の学校に通うことで決着しました。また、小学校や保育園の子どもをもつ世代が、市内の便利な中心地に住み、この地域に住まなくなる心配もあります。町内商店の衰退問題もあり、この地域の人口を減らさないことが望まれています。

 また、都市計画税が新たな負担になります。その他の税金、公共料金はほぼすべて合併と同時に市の水準となり、住民の負担は増えることになります。祭りなど各行事への補助金はなくなります。二年後は、有権者数で見る限りこの地域から一人の議員も出せなくなります。

 今回の合併をめぐる件では、要求の一致による協力も可能となりました。これは、保守基盤の強い兼山では画期的なことでした。

 したがって、今後のまちづくりや要求の一致点で力を合わせることと、署名運動ができた機会を生かし、共同の方向を発展させることが住民の利益になると判断しています。

 これからのまちづくりに協力し、また、住民の党への期待を見失わない努力をしていかなくてはと思っています。(杉浦隆二町議)


来年には1822市町村に

総務省発表

 政府は当初、合併した市町村に対する合併特例債や地方交付税などの財政優遇措置を定めた合併特例法の適用期限を今年三月末としていました。しかし、昨年に同法を改定し、今年三月末までに都道府県知事に合併を申請し、来年三月末までに合併すれば優遇措置を適用すると定めたことから、全国で合併協議が加速しました。

 総務省によると、一九九九年には全国に三千二百三十二あった市町村が現在は二千三百九十五(七百三十九市、千三百十七町、三百三十九村)にまで減少。来年三月三十一日には千八百二十二になるとしています。


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