2005年4月17日(日)「しんぶん赤旗」

衆院憲法調査会の最終報告書

9条と自衛隊

「何らかの措置」の意味は


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最終報告を議決した衆院の憲法調査会。手前は着席したまま反対の意思表示をする共産党の山口富男氏(右)と社民党の土井たか子氏(左)=15日午前、国会内

 衆院憲法調査会が十五日に議決した最終報告書は、焦点の九条について「自衛権及び自衛隊について何らかの憲法上の措置をとることを否定しない意見が多く述べられた」「非軍事の分野に限らず国連の集団安全保障活動に参加すべきであるとする意見が多く述べられた」としています。

二項廃止は
全体の廃止

 これは、日本共産党の志位和夫委員長が記者会見で指摘したように、「自衛隊の海外での武力行使のための九条改憲への方向づけをあたえようとするもの」にほかなりません。

 憲法九条は「戦争放棄」を宣言した一項につづけて、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定しています。自衛隊について「何らかの憲法上の措置をとる」とは、この九条二項を改変することを意味します。

 九条二項の改変は、単に自衛隊の現状追認にはとどまりません。

 政府はこれまで、九条二項があるために、自衛隊を「軍隊ではない」、「自衛のための必要最小限度の実力組織である」とごまかしてきました。そこから「派生する当然の問題」として、(1)武力行使の目的をもって武装した部隊を海外に派遣すること(2)集団的自衛権を行使すること(3)目的・任務が武力行使を伴う国連の活動に参加すること―の三つを「許されない」としてきました(工藤敦夫内閣法制局長官の答弁、九〇年十月二十四日衆院国連平和協力特別委)。

 つまり、九条二項が海外での武力行使を許さない「歯止め」となってきたのです。

 この「歯止め」を取り払うことは、「『海外で戦争をする国』に日本を変質させることになり」、「『戦争放棄』を規定した九条一項をふくめた九条全体を廃棄すること」(日本共産党第三回中央委員会総会での志位和夫委員長の報告)になるのです。

 だからこそ、最終報告書を主導した自民党の船田元・幹事も十五日の調査会で「自衛隊の存在について…『憲法上何らかの措置をとることを否定しない意見が多かった』との文言が多くの政党によって合意されたことには、大変大きな意義がある」と発言。改憲論をふりまいてきた「読売」「産経」の社説も同じ部分をひき「改正の方向性は確保された」などと書いたのです。

米いいなり
先制攻撃も

 報告書で、「非軍事の分野に限らず国連の集団安全保障活動に参加すべきである」という意見が多数とされたことも、九条改憲の狙いが海外での武力行使解禁にあることを裏付けています。

 先に示した政府解釈のように、従来は湾岸戦争の際の多国籍軍のように、武力行使が目的の組織にはたとえ国連のものであれ、参加できないというのが政府の立場でした。この立場を投げ捨てようというのです。これも九条二項を改変することで実現しようとしています。

 この二つの論点で意見の「集約」をはかったのは、アメリカの単独行動主義にもとづく先制攻撃の戦争に参戦するためです。

 「九条は日米同盟の邪魔者」と発言したアーミテージ前米国務副長官はその理由を「連合軍が共同作戦をとる段階で、ひっかからざるを得ない」(『文芸春秋』〇四年三月号)からだとのべ、「それが偽らざる所懐(しょかい)です」としています。つまり、イラク攻撃のように米国が無法な先制攻撃をしかけるときも国連の看板の下で戦争するときも、「連合軍」として自衛隊も参戦させる、そのためには憲法九条が邪魔だというのです。

 報告書で「多数」とされた意見も、国民のなかでは多数でないことは、各種の世論調査でも明らかです。それに加え、改憲の真の目的が明らかになれば、改憲派と国民との矛盾はいっそう大きくならざるを得ません。

 (藤田健)


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