2005年4月12日(火)「しんぶん赤旗」

05春闘を追う

トヨタ下請け もう泣かない

労組結成 賃下げとたたかう


 “トヨタの都合でこれ以上賃金を減らされてたまるか”―。純利益が二年連続して一兆円を突破したトヨタ自動車の大もうけの陰で泣かされ続けている下請け企業の労働者が立ちあがりました。トヨタ自動車の新車を搬送する「高陽輸送」(本社福岡市)で、賃金切り下げや手当カットの事態に、労働組合を結成して、たたかっています。(内野健太郎)

 玄界灘から吹きつける強い風を受けて、数台の完成車を積んだキャリアカーが高速道路をスピードを上げて走ります。

1日に3往復

 福岡と北九州両市のほぼ中間に位置し、かつて石炭の採掘で栄えた旧産炭地、宮田町に工場を構えるトヨタ自動車九州。ここから、車を積み出す北九州市の新門司港へ向かいます。

 「どんなにがんばっても、一日三往復が精いっぱいやね」と嘆くキャリアカーの乗務員たち。「香椎浜(かしいはま)やったら、四、五往復はできたけんが、新門司港になって往復三時間はかかるようになった。歩合給やけん、相当の減収たい」

 これまで福岡市の香椎浜で行っていた完成車の積み出しを新門司港に変更され、西にキャリアカーを走らせていたものが一転、北東に向かうことに。走行距離は、片道六十八キロから九十八キロへと一・四倍に延びました。

 さらに、香椎浜では完成車を降ろすだけの作業が新門司港では愛知県などから搬送されてきた新車を帰り荷で載せ、宮田町の集積地まで運ぶことに。新門司港へ運ぶのは、主に海外向けの左ハンドル車で、愛知県を経て輸出されます。帰り荷は、国内での販売用です。

6万円の減収

 会社は「迅速な輸送のために」と高速道路を使うように指示していますが、高速料金は乗務員に自己負担させています。

 高速料金も、新門司港の方が高くなります。大半のキャリアカーが帰り荷を積むようになると、会社は帰り荷を積んだ場合の手当(復荷手当)を三百円から百五十円に半減しました。乗務員は、月三万円から六万円の減収になります。

 「ぼくらは“世界のトヨタ”の仕事を背負っとうという誇りがあるし、『トヨタの仕事はよかろうが』といわれるけんが、その実態はあまりにかけ離れている」と宮田工場で積み込み作業を受け持つ溝口健太郎さん(32)は語気を強めます。

 溝口さんは、キャリアカーに五、六台の完成車を積み込み、新門司港から帰ってきた乗務員に引き渡し、乗務員が乗ってきたキャリアカーにまた完成車を積み込みます。キャリアカーを十分間隔で出発させるため、「休憩もままならない」といいます。工場のラインから出てくる完成車をわずか数人で担当しています。

 「新門司港になってから、荷がどんどんたまるようになった。土曜日はほとんど出勤です。そやけんが何日出勤しても給料は一律」と溝口さん。

県労連に相談

 午後六時から翌朝六時までの勤務を一週間こなし、その翌週は午前六時から午後四時の勤務で、これをくり返します。

 ところが月給は積み込み作業で二十万円そこそこ。工場のラインから車を仕分けする構内作業の労働者に至っては十四、五万円という低さです。

 宮田工場は、愛知県以外にトヨタ自動車が持つ国内の生産拠点で、年二十三万台を生産しています。それを福岡県全体で三十万台の生産体制に増やそうとしています。このため、船舶が通り抜けにくい関門海峡を経ずに直接、瀬戸内海航路で出荷できる新門司港に変更しました。

 トヨタ自動車はさらに、北九州市に隣接した苅田町に新工場を建設する計画です。「外国人労働者を大量採用」と地方紙で報じられています。

 「おれたちは一体、どうなるとやろか」。労働者たちは話し合い、福岡県労連に相談を寄せました。二月、建交労(全日本建設交運一般労働組合)福岡合同支部の高陽輸送分会を結成しました。

 組合はただちに一方的な手当削減をやめ、始・終業時間、月の就労日数を明確にすることを求めて団体交渉しました。

 「なかなかトヨタの方が(下請け代金を)あげてくれん」と会社側は渋りながらも、〇五春闘で交渉をすすめています。

 建交労県本部の山崎貢副委員長はいいます。

 「高陽輸送がしている仕事は、トヨタのベルトコンベヤー的な業務で、本来は生産工程の一環です。運送会社を使うことでコスト削減を果たしています。誇りを持ってトヨタの仕事をしたい、子どもたちに大切な仕事をしているんだと胸を張って語りたい、これが高陽輸送の仲間たちの思いです。トヨタは社会的責任を果たしてほしい」


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp