2005年4月12日(火)「しんぶん赤旗」

衆院憲法調査会の最終報告書

15日議決へ運営強引


 改憲をめざす自民、民主、公明の三党は、衆院憲法調査会の最終報告書を十五日にも議決し、衆院議長に提出することを狙って、強引なやり方が目立っています。

 中山太郎衆院憲法調査会長は八日の幹事懇談会後、「報告書案の修正作業はあらかた終わった」とのべ、十二日の幹事会で議論を打ち切る構えです。そのうえ、八日の幹事懇談会では、自民党の船田元・議員が調査会で調査したこともない「憲法問題での常設機関の設置」を最終報告書に盛り込むよう提案しました。

 その中身は「憲法調査会の基本的な枠組みを維持しつつ、これに憲法改正手続き法の審査及び起草権限を付与することがのぞましいとの点で、ほぼ認識が一致した」というもの。憲法調査会を改憲のための国民投票法案の起草・審議機関とするねらいです。

 しかし、常設機関設置は調査会で調査さえしていない事項です。そのうえ、日本共産党の山口富男議員が「幹事会で一度も協議していないのに『認識がほぼ一致した』とは何事か」と一喝したように、あまりに乱暴なやり方です。

判断資料も示さず

 自民、民主などによって三月二十九日に示された最終報告書の素案は、「委員の意見を論点ごとに類型化」し、その論点について「概ねダブルスコア(二‥一)の開きがある場合に大小関係をつける」という方針で編集したものでした。このようなまとめ自体、憲法について「広範かつ総合的に調査」するとした調査会規程を逸脱しています。自民党などの改憲の論点にあわせて、強引に意見の「大小」をつけようというのです。

 しかも、論点の抽出、意見の「大小」の判定がどのような根拠で行われたかも重大です。基準となる判断資料はどうなっているのか、山口氏が提出をもとめてきましたが、自民、公明、民主各党幹事はその要求を「もっともだ」としながら、一貫して拒否しているのです。

 「事務局が一つ一つチェックしているから必要ない」(船田氏)と「弁明」していますが、「基本的な資料が出せないのでは協議にならない」(山口氏)のは当然です。

「改憲に使う」思惑

 一方、政治的立場を超えて広範に出された意見は記載されず、少数意見でも与党に配慮して記載したとみられる例もあります。たとえば、九条関係では「自衛権及び自衛隊と憲法規定との関係」は冒頭にあるのに、「九条の意義」は項目化さえされていません。「九条は過去五十年あまりの間、務めを果たしている」とのべた宮沢喜一元首相や、「九条は世界で特別の評価を獲得するに至っている」とのべた猪口邦子元国連軍縮大使など九条を評価するさまざまな見解が、政治的立場の違いを超えて表明されてきたのにもかかわらずです。

 山口氏の指摘で、あわてて報告書に「九条に対する評価」という項目を設ける動きもあります。

 一方、「生命倫理と憲法」という項目についての発言者数は「五〜六人」なのに、報告書には記載されています。「概(おおむね)二十人程度が『論点』とする基準ならはずれるはず」(山口氏)です。「例外扱い」(民主議員)だというのですが、その根拠は特に示されていません。

 ちなみに「生命倫理と憲法」というテーマは中山太郎会長が重視してきたもので、自民党新憲法起草委小委員会の要綱でも「目玉」の一つにされているものです。

 最終報告書を改憲の方向付けに政治利用する思惑があるからです。思惑優先で憲法調査をゆがめることは許されません。


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