2005年4月10日(日)「しんぶん赤旗」

監獄法、100年ぶりの改正案

処遇改善で前進

代用監獄恒久化の恐れも


写真
名古屋刑務所を視察し革手錠を見る野党議員。左が井上哲士参院議員、右隣が佐々木憲昭衆院議員=2002年12月

 八日、衆院法務委員会で刑事施設受刑者処遇法案(監獄法改正案)が自民・公明・民主の賛成で可決されました(同委員会は共産・社民の委員は不在)。刑務所など刑事施設における受刑者の処遇改善へ一歩前進です。

 現在の監獄法は一九〇八年(明治四十一年)に制定されたもので、今回は実に約百年ぶりの改正です。現行法は刑事施設の管理側に強い権限を持たせる一方、受刑者の人権はほとんど無視していました。

看守による暴行

 改正のきっかけは二〇〇二年に名古屋刑務所で看守による暴行致死事件が発覚したことでした。強力な消防ホースで受刑者に放水する、革手錠のベルトで腹部を強く締め付けて放置するなど、信じられない暴行の事実に世論もわきたち、国会でも繰り返し各党が政府を追及しました。

 改正案では、受刑者の人権尊重と処遇改善を大きな目的として、月二回以上の面会や医療の保障、現行法では不可能な外出・外泊制度も導入します。市民に開かれた運営をめざし、地域住民や弁護士による刑事施設視察委員会を設けます。また、薬物依存の治療や性犯罪の再発防止など、受刑者の状況に応じた矯正処遇を義務づけます。受刑者の処遇改善を求めてきた日本弁護士連合会(日弁連)も「数々の不十分点はあるが全体的に評価できる」としています。

 監獄法は過去三回(八二年、八七年、九一年)改正案が国会に提出されましたが、いずれも日弁連や日本共産党を含む多くの反対で廃案になってきました。その理由は本来三日間までしか拘禁できない警察の留置場にさらに二十日間も勾留する代用監獄の恒久化が含まれていたからです。代用監獄は警察による日常的な監視と長時間の取り調べを可能にし、えん罪の温床となってきました。

警察施設の規定

 今回は裁判で刑の確定した受刑者の処遇改善を急ぐため、代用監獄など未決拘禁者の処遇問題は今後にゆだねられています。未決者の処遇について衆院法務委員会でも「日本弁護士連合会との協議を迅速に進め、早期の法整備の実現に努めること」という付帯決議が採択されました。

 ところが法律の整合性を理由に、刑事施設ではない警察施設(代用監獄はここに含まれます)の運営について改正案では詳細な規定を設けています。日弁連は「これらの規定の必要性そのものが疑問である」と述べ、自由法曹団もこれらの規定の削除を求めています。

 改正案は十四日の衆院本会議で可決され参議院に送られる予定です。日本共産党の井上哲士参院議員は「改正案は刑務所の改善として評価できるものですが、さらに代用監獄の恒久化につながらないように修正を求めていきたい」と話しています。

 (北村隆志)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp