2005年4月9日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「つくる会」教科書

真理と平和に背を向けている


 「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」―教育基本法がこう定めていることは、国民の願いと一致します。ところが、歴史を偽り、侵略戦争や植民地支配を正当化する教科書を、文科省が検定合格としました。

 問題の歴史教科書は、侵略戦争美化、憲法改悪を主張する「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆し、フジサンケイグループの扶桑社が刊行します。扶桑社は、検定規則に違反して、検定結果が出る前から宣伝・営業活動を行い、文科省から「厳重注意」されています。中身も普及方法もルール違反です。

根深い侵略正当化

 「つくる会」教科書の最大の特徴は、侵略戦争美化です。

 たとえば、「大東亜戦争(太平洋戦争)」という項目で、次のように書いています。「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した。日本政府は、この戦争を大東亜戦争と命名した」

 日本政府の主張を書いただけのように見えますが、当時の天皇制政府のいい分を肯定する立場での記述です。「大東亜戦争」と呼ぶのは、「自存自衛」「大東亜共栄圏建設」という天皇制政府の宣伝どおりの戦争だと見ているからです。

 また、太平洋戦争で東南アジア諸国を侵略したことが、欧米の植民地とされていた諸国の独立を促進したかのように書いているところもあります。

 しかし、天皇制政府が東南アジア諸国を侵略したのは、資源の獲得というにとどまらず、「帝国領土」の拡大を狙ったものでした。いわば、欧米諸国にとってかわって支配しようとしたのであり、独立に寄与したかのように言うのは、まさに侵略戦争美化論です。

 「つくる会」教科書には、客観性を装いながら、実は、天皇制政府のいい分を正当化する記述が随所にあります。

 たとえば、一九一〇年の「韓国併合」については、「日本政府は、日本の安全と満州の権益を防衛するために、韓国の併合が必要であると考えた」と書いています。「武力を背景」にしていたことに触れてはいますが、大きな国際的批判を受けなかったことを指摘して、日本政府の「考え」が容認されたように描いています。これでは、結局、「韓国併合」は仕方のないことであったということにしかなりません。

 また、一九三一年からの中国東北部侵略―「満州事変」も、主要な責任は関東軍にあるように描き、昭和天皇が、それを評価し、激励していた事実には一切触れません。そして、「満州国は、五族協和、王道楽土建設のスローガンのもと、日本の重工業の進出などにより急激な経済成長をとげた」などと、日本のかいらい国家、実質的な植民地支配を美化する言葉を連ねています。

 このように、侵略戦争美化、植民地支配正当化の姿勢は一貫しています。従軍慰安婦や南京大虐殺など、日本軍の非道ぶりを示す事実を一切無視しているのも、そうした姿勢の表れです。

友好関係を台無しに

 侵略戦争と植民地支配を反省し、二度と繰り返さない国になってこそ、日本は、アジアと世界の人々との友好関係を発展させることができます。それを台無しにする侵略戦争美化の危険な教科書にたいし、歴史的事実と道理にもとづく批判を強めることが必要です。


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