2005年4月7日(木)「しんぶん赤旗」

扶桑社が検定規則違反

合格前の「つくる会」教科書

教育委関係者に渡す


 日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した教科書が文部科学省の検定を通過した問題で、教科書を出版した扶桑社が検定規則に違反し、検定合格前に教科書を地方の教育委員会関係者に渡していたことが六日までにわかりました。研究者らから「禁じられた事前の営業・宣伝活動に当たる」と批判する声が出ています。

文科省が厳重注意

 この日開かれた衆議院文部科学委員会で、文科省は扶桑社の「白表紙本」と呼ばれる申請段階の本が検定期間中に教員に「貸与、閲覧」されていたことを認めました。そして昨年から今年にかけて「指導」を三回、厳重注意を一回したと説明。ほかの出版社が指導を受けた例はなかったとしました。中山成彬文科相は「ルール違反」との考えを示しました。

 教科用図書検定規則実施細則は、検定終了までは、申請本の内容が当該申請者以外の者の知るところとならないよう適切に管理しなければならないと定めています。文科省は「違反した場合には検定を停止することもある」としています。

 この問題については、高嶋伸欣・琉球大教授らが三月に「流出」を指摘し、実態解明を小泉首相と中山文科相に申し入れています。

 申し入れ書によると、埼玉県、東京都、京都府、和歌山県の各教育委員会関係者が、昨年末に「白表紙本」やそのコピーを所持。そのうち京都府、和歌山県の関係者が「扶桑社から受け取った」と証言しているとしています。

 高嶋教授は、「採択権限を持つ各地の教育委員会に、出版社が事前の採択活動をするのは極めて不公正。本来、検定はガラス張りの中で行うべきだが、つくる会側が事前公表の禁止を主張し、文科省が受け入れた。その扶桑社の教科書が規則に違反しながら検定を通過することは悪質だ」と話しています。

 「新しい歴史教科書をつくる会」は、日本の侵略戦争を美化し、改憲論を強調する中学用「歴史」「公民」の教科書を扶桑社から出版。五日に文部科学省の検定を合格しました。内外の批判をうけています。


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