2005年4月5日(火)「しんぶん赤旗」

写真の親せきに会える

カシミール

停戦ライン越えバス

印パ 7日から運行


 【ニューデリー=小玉純一】カシミール地方のインド側スリナガルとパキスタン側ムザファラバードを結ぶバスの運行が七日に始まります。カシミールの両側を結ぶバス運行は一九四七年八月の両国分離独立、カシミールの帰属をめぐる同年十月の第一次印パ戦争以後、初めてです。

 カシミールでは、「死ぬまでには親せきに会いたい」というお年寄りから、「写真でしかみたことのない親せきに会いたい」という若者まで、分断で離れ離れになった家族、親せきとの再会や初対面に向けて期待が高まっています。

 カシミールの停戦ライン越しのバス運行は、昨年初頭以来継続している両国間の「複合的対話」の枠組みで検討され、今年二月、両国外相会談で決定されたもの。バス運行は半世紀余も続いてきた印パ対立の中心地カシミールでの歴史的出来事であり、この間の最も重要な信頼醸成措置としても内外から歓迎されています。

友好の大看板

 運行開始にあたり、インド側スリナガルではマンモハン・シン首相と与党連合議長のソニア・ガンジー国民会議派総裁が、パキスタン側ムザファラバードではカシミール特別州首相が出発合図の旗振りを行う予定です。

 スリナガルでは二日、マンモハン・シン首相とパキスタンのムシャラフ大統領の顔写真が写し出された印パ友好の大看板が登場。同地ではパキスタン元首の写真が公的に張り出されるのは初めてです。

 路線は百七十キロメートル。停戦ライン付近では道路が復旧され地雷撤去も行われました。最初のバスはスリナガルとムザファラバードからそれぞれ二台。双方から約三十人と伝えられる乗客は、停戦ラインを越える際、いったん下車し、徒歩でラインを越えバスを乗り換えます。

警備の強化も

 他方、カシミールのインドからの分離を掲げるパキスタン側の武装勢力は、「カシミールを永久的にインド支配下に置く陰謀だ」としてバス運行に敵対的姿勢を示しています。三十日には乗客に乗車をやめるよう求める声明を報道機関に送りました。声明には乗客リストも含まれ、報道機関に対しそれを報じるよう求めました。武装勢力は二日、「乗客予定者に電話をかけている」などと発表。二人が乗車をやめたという報道もあります。

 インド側からの十九人乗りバスには治安要員が四人ずつ乗り込み、約五十人の兵士がジープ四台で伴走します。インド軍や警察は武装勢力の策動を警戒し、沿道の警備をいっそう強化する方針です。


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