2005年4月5日(火)「しんぶん赤旗」

「本当に達成できるのか」

京都議定書 温暖化ガス削減計画

危ぐの声


表

 京都議定書が発効し、政府の地球温暖化対策推進本部(本部長・小泉純一郎首相)は温暖化ガス削減の目標達成計画案を了承(三月二十九日)しました。国民からの意見募集を十三日までおこない五月に閣議決定する運びですが、同計画案に「本当に達成できるのか」「抜本的な政策強化を」と懸念の声があがっています。

 計画案は、「他国のモデルとなる世界に冠たる環境先進国家として、地球温暖化問題において世界をリードする役割を果たしていく」とうたっています。

 しかし、その内容は自主的取り組みや啓発活動に大きく依存した現在の「地球温暖化対策推進大綱」の枠を出ないものです。

CO2の排出増加を容認

 計画案は二〇〇八―一二年の間に温暖化ガスを一九九〇年比6%削減するのが目標です(表参照)。しかし、その内訳をみると、エネルギー使用によるCO2は削減どころか0・6%の排出増加を容認しています。

 国内での温暖化ガス排出削減はわずか0・5%減にすぎず、森林対策や京都メカニズム(海外から温暖化ガスの排出枠をえて、自国の目標達成に使える仕組み)の活用で6%減にこぎつけるというもので、数字あわせの感がぬぐえないものです。

 計画案は京都メカニズムを「補足的」なものとしていますが、実際には目標数値をみても中核的なものとなっています。電力、鉄鋼業界などが国内で排出を増加させながら、他国での削減量の一部を利用するというのでは到底「他国のモデル」にはなり得ません。

 環境団体「気候ネットワーク」は「産業部門の割り振りをより深掘し、政策を強化すること」を求めていますが、いまこのことこそ必要です。

 環境税や国内排出量取引制度などの効果ある施策も先送りされています。

自主性の名で産業界まかせ

 マスメディアも「自主性に依存したこれまでの大綱で、国内の排出量は2002年度は6%削減どころか、7・6%増えている。そのやり方を踏襲した今回の計画案で、本当に6%達成できるのか。懸念は払しょくできない」(「読売」三月三十日付)、「このままでは達成の見込みはない」(「毎日」同)と指摘しています。

 目標達成のためには最大の温暖化ガス排出分野である産業部門に、実効ある措置をとらせていくことが必要です。しかし、現「大綱」と同様、計画案は、日本経団連の「自主行動計画の着実な実施」を求め、それが「対策の中心的役割を果たす」と位置付けています。加えて計画案では「目標、内容についてはその自主性に委ねられるべきである」としています。これでは目標達成は産業界まかせといっているようなものです。

 計画案で排出量が一定規模の事業所に排出量の報告、公表制度を導入したのは前進ですが、削減効果を高めるためには少なくともドイツで行われている産業界との協定化など実効ある措置に踏みこむことが必要です。それが「環境先進国家」への道です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp