2005年4月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

都市型水害から住民を守る

雨水貯留管


 地表がコンクリートで覆われるようになり、深刻になっている都市型水害。住民を守る対策の一つが、雨水を一時的にためる雨水貯留管です。住民の要求と日本共産党の取り組みによって、この3月に工事が完成した東京都港区と、今年度までの計画で事業が進んでいる名古屋市西区の例を紹介します。


浸水被害を大幅に緩和 完成 東京・港区

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建設中の貯留管を視察する、くぼた光前都=03年6月30日

 集中豪雨による都市での水害が全国的に起こり、「都市型水害」として認知をされるようになりつつあった一九九九年。その八月末に東京都心港区でも時間最大雨量一一五ミリという記録的な集中豪雨が発生し、区内二級河川の古川が溢水(いっすい)し、床上浸水百九十一世帯、床下浸水七百四十一世帯、地下浸水三十五棟という大きな被害になりました。

 その直後の九月の都議会本会議で日本共産党の、くぼた光都議(当時)は、いち早く都市型水害対策や雨水流出抑制型都市づくりを実施するよう知事に迫りました。

都下水道局が重点地区指定

 翌年の三月には、東京都下水道局が二十三区内の緊急重点雨水対策を策定し、二十五の重点地区のうち港区内では南麻布・白金台地区が指定されました。その後重点地区は三十七地区へと増え、区内では新たに赤坂と高輪地区が追加されています。

 このうち白金台地区では、住民からの陳情などもあっていち早く道路下にのべ千五百二十九メートル、容量約五千立方メートルの流下貯留管(将来は下水管の枝線として使用されるが、それまでは下水幹線との接続部を細くして流量を減らし、雨水をためる管として暫定的に利用する)が計画されました。

 二〇〇一年春から始まった工事は、この三月末にすべて完成しました。これによって、これまでの規模の集中豪雨であれば被害は大幅に緩和されることになります。

 さらに完成までの緊急対応として学校の敷地を借りて仮設貯留池が設置されてきました。住民とともにくぼた前都議は、この三年間毎年、貯留管工事が部分完成するたびに下水道局に要請して、貯留管の暫定利用を段階的に実現させてきました。これは、この間の水害被害の緩和に役立ちました。

 また、南麻布地区でも古川に沿って貯留管をつくる計画が具体化されつつあります。

 一方、港区議会でも党区議団が積極的に水害対策を追求して港区全域で、雨水浸透ます、道路横断溝などの設置や透水性舗装など都と区の連携で数々の対策工事を実施させてきました。

 都市型水害の特徴の一つとして、くぼんだ地形付近の一、二件が被害を受けるだけで大きな問題にならない場合もあることから、「しんぶん赤旗」の集金や党活動の訪問時などに寄せられた情報をもとに、くぼた前都議や地元区議が個々に交渉の窓口となって対策を前進させてきました。

まちづくりを住民本位に

 都市型水害は、都市再開発などによるヒートアイランド現象や地表をコンクリートなどで覆ってしまうことに原因があり、こうしたまちづくりのあり方が根本的に問われています。

 この点からも、くぼた事務所と党区議団は、まちづくり交流会をこの間二回開催するなど、多彩なまちづくり運動を展開している区民とともに、これまでのまちづくりを住民本位に転換させる取り組みも進めています。


豪雨被害繰り返さない 進行中 名古屋・西区

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都市化が進み保水機能のある田畑などがなくなると、雨水は一気に下水管に流れ込みます。雨水貯留管は雨水を一時的に貯留し、ピーク水量を小さくします(名古屋市のパンフレットから)

 二〇〇〇年九月十一日の東海豪雨によって、新川の堤防が決壊した名古屋市西区の地域は大変な被害に見舞われました。日本共産党市議団は、災害後ただちに被災地に足を運び、被災者への支援活動を行うとともに、市に対して被災者の生活再建、営業再建支援を求め続けてきました。

 西区の日本共産党支部や後援会のみなさんと一緒に、炊き出しや後片付けの手伝いや相談活動にも力を尽くしました。

“河川の整備が開発に遅れる”

 なぜ甚大な被害になったのか、豪雨災害が最小限にすむような対策をどう取るのか、党市議団は議会で質問を重ねてきました。

 名古屋市を含む一市十八市町で新川流域総合治水対策協議会が設けられ、時間雨量五〇ミリ対応の流域整備計画を立て一九九二年に目標達成としていました。しかし、九七年度末ではわずか13・2%の達成率という実態でした。新川は、一級河川である庄内川のはんらんを防ぐために、洗いぜきから放水するようにと江戸時代につくられた人工的な川です。

 その庄内川の堤防整備率も24%と全国平均52%より大きく遅れていたのです。そして、新川の流域は、市街化が進んで田や畑が減少し、降った雨がたまる場所や地面に浸透する場所が減っていたことも豪雨災害の大きな原因でした。

 日本共産党の、わしの恵子市議の議会質問に対して、市長は「開発の進ちょくに河川整備が追いついていない」と認め、「国や県に早急な河川整備を強く求める。市も五〇ミリ対応できるよう治水施設の早期完成を目指す」と答弁しました。

 そして、国や県の河川激甚災害対策特別緊急事業が進められ、市でも十年間の緊急雨水整備計画を策定し、第一期分として〇五年度までの五カ年計画の事業が進められています。主な内容として、(1)ポンプ所の増強(2)公園の地下などに雨水貯留施設の増強(3)道路の地下部分に貯留管を整備(4)河川の堤防のかさ上げやしゅんせつ―などです。

 これらの事業は、下水道や河川に集中的に流れ出る雨水の量を減らすため、雨水を一時的にためたり、地面にしみ込みやすくするものです。被災地を回って被災者の声を聞き、現地の実態を調査しながら議会でも求めつづけてきた党市議団として、大きな成果だと考えます。

「大きな力に」住民から期待

 特に、道路の地下の貯留管についてですが、西区の小田井貯留管は五万四千立方メートルの水をためることができ、都市型の水害対策に大きな力となるものだと、住民からも期待が寄せられています。

 今後さらに豪雨災害のない安心・安全なまちづくりが必要ですが、同時にその間にも開発がどんどん進められる問題も生じてきます。党市議団は、東海豪雨の教訓からどんな豪雨でも住民の安全が守られるよう、東京都墨田区のように、一般家庭用を含め、民間マンションやビル、店舗、集合住宅などにも雨水貯留施設や浸透ます、透水性舗装の助成制度を設けるようにと議会で求め続けています。

 また、河川部の上流域での開発優先のまちづくりにもメスを入れることが必要です。


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