2005年3月30日(水)「しんぶん赤旗」
ブラジル
IMF融資から脱却
国民生活の向上課題
【メキシコ市=松島良尚】ブラジルのパロシ財務相は二十八日、三月末に期限の来る国際通貨基金(IMF)の融資契約を更新しないと発表しました。同国は、ロシア危機の影響で金融危機に見舞われ、一九九八年末からIMFの緊急融資を受けていました。今回の措置により、当時受けた融資と引き換えのIMFによる政策条件の押し付けがなくなることになります。
現在の融資契約は、ブラジルの求めに応じて信用が与えられる四百十七億ドル(約四兆五千億円)枠のもの。契約非更新は、これまで借りた約二百五十億ドルを返済したうえ、IMFからの融資はもう必要としないとの意思表示です。
パロシ財務相は今回の決断の背景として、「ブラジル経済の脆弱(ぜいじゃく)性は確実に減少した。われわれは力強い循環的成長のさなかにいる。対外収支はきわめて良好だ」と述べました。
昨年の国内総生産(GDP)成長率は5・2%で、この十年間で最大です。貿易は32%伸び、三百三十七億ドルの黒字を記録。公的債務の対GDP比はルラ政権発足時の65・5%から54・5%に改善されました。ただし、三千五百五億ドルの公的債務を抱えています。
ブラジル政府の決断についてスノー米財務長官は直ちに声明を発表し、「すばらしいニュースだ。金融上の功績が証明された。大きな信頼がルラ大統領に寄せられる」と称賛。IMFのラト専務理事もルラ政権の経済運営を高く評価しました。
ルラ政権は就任以来、前政権がIMFと交わした政策条件を守り、IMFが示す以上の財政黒字目標さえ掲げてきました。財政出動の手を縛りかねないこうした経済運営やIMFとの協調には、与党内からも批判が出ています。マクロ経済の好転を国民生活の向上にどう反映させていくかが問われています。

