2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
こちら社会部
増える融資保証金詐欺
一度払うと「もう1回」
ヤミ金から“転身”
「融資するので保証料を振り込め」といって融資をせずに保証料をだましとる「融資保証金詐欺」の被害が増えています。「振り込め詐欺」の手口のなかでもいま、もっとも訴えが多い事例です。元ヤミ金融業者が詐欺グループに“転身”し、ヤミ金時代の「顧客」をもう一度食い物にしている実態も浮かんできています。
東京・足立区で生活保護を受給する男性(59)は昨年十一月、「十万円を融資する」という業者に「信用保証料」二万五千円を振り込みました。男性の生活保護費は月七万円あまりで、帰郷する費用が必要でした。「田舎に帰ることしか頭になかった。振り込んでからおかしいな、と思ったんです」
警察取り合わず
業者は融資しないだけではなく、「振り込んだ時に入力した名前が間違っていたからもう一回、二万五千円を振り込め」「そっちが勝手に解約したんだから解約金五万円を振り込め」と逆に脅してきました。
男性は計三回、警察にかけこみ、「詐欺ではないか」と訴えました。しかし警察は業者に電話した後、「相手が返すといっているから、詐欺として扱えない」と言ったといいます。
男性は以前、ヤミ金融から高利の金を借りていたことがありました。最近になって保証金詐欺の振込先が、以前のヤミ金融の振込先と同じ名前であることに気付きました。「融資するという時に生活保護の受給証明まで送った。卑劣な詐欺だ」と男性は話します。
警察庁がまとめた保証金詐欺の被害額は昨年一年間で三十八億円超。架空請求詐欺(約五十四億円)に近い規模です。
全国ヤミ金融対策会議がこのほど実施した「ヤミ金融・振り込め詐欺110番」に寄せられた相談は、半数以上が保証金詐欺の被害でした(十一会場で計四十四件)。そこからは悪質な手口が浮かんでいます。
――十五万円を振り込んだが融資がなく、「もう二十万円送ればすぐ貸す」といわれ、また振り込んだ。「三菱」の名前をかたり、財務局登録だと書かれていた。名前を信用してしまった。
――百万円融資の話で十六万円の保証金を振り込んだ。融資がなく困っていると「支援協会」「弁護士協会」が電話してきて「相談にのる」というので、そこにまた計七十万円を振り込んだ。
「貸す」「返す」といいながら、一度ならず何度でも金をだましとろうとするのが特徴です。
いっせい告発へ
詐欺グループは元ヤミ金業者が多いと指摘されます。被害額二百億円超という組織的振り込め詐欺事件でも、元ヤミ金業者、店員らが逮捕されています。
全国ヤミ金融対策会議代表幹事の宇都宮健児弁護士は、「効率よく稼ぐため、とにかくぼったくっている。詐欺性、悪質さをエスカレートさせている。詐欺や強要という明らかな犯罪なのに、被害者が警察にいっても取り合っていない」と指摘します。
同対策会議は、電話相談の結果などをもとに三月末に振り込め詐欺のいっせい刑事告発をする予定です。
「振り込め」こんな手口も
ワンクリック詐欺 パソコンや携帯電話でサイト内、メール内の何らかの項目をクリックすると、「登録されました」などとして料金を請求してくる。
データ消去料請求詐欺 「流出している個人情報を消去する」「ブラックリストから削除する」などとうそを言い、手数料を要求してくる。
簡易裁判所悪用詐欺 簡易裁判所の手続きを悪用して督促や少額訴訟の呼び出しをさせ、架空の債権を取り立てようとしてくる。この場合放置してはいけない。裁判所を偽装して架空請求してくる場合も。

