2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」

けいざい 四季報 2005__I (2)

日米関係

米大統領が“小泉点検”


グラフ:2004年の日米貿易

 「(ライス米国務長官は)ビーフ(牛肉)の問題だけで(日本に)来たわけではない。名前がライス(米)だから。ビーフじゃないんだから」。小泉首相は十九日、ライス米国務長官との会談後、記者団にこう語りました。

 牛肉問題の沈静化をはかりたい小泉首相ですが、ライス長官は強硬でした。

 「米国では重大な問題になっており、緊急に解決すべき問題だ」と米国産牛肉の早期輸入再開を首相に迫る同長官。「一九八〇年代の貿易摩擦当時の雰囲気に逆戻りすることのないよう努力していかなければならない」とたたみかけました。

 八〇年代の日米貿易摩擦の日本側の要因には、日本の自動車、電機産業などが低賃金・長時間労働、下請けいじめでコストを削減し、米国に輸出攻勢をかけたことがありました。

 米国側にも軍拡や多国籍企業による経済空洞化など貿易赤字を生む原因がありました。双方が抱える問題点はいまも根本的なメスが入れられていません。

 今回の米国産牛肉の輸入停止は、BSE(牛海綿状脳症)発生に伴うもの。米紙も、牛肉貿易を再開する「唯一の責任ある道」は牛の検査だとし、「必要なら全頭検査も行うべきだ」(ニューヨーク・タイムズ十五日付社説)としています。

外圧とせず

 小泉首相は会談で、ライス長官に「食の安全の視点から必要な国内手続きを踏み、基準に基づき進めていく」と基本方針を述べました。ただ、首相は会談後、記者団に「食の安全を重視しながら、早期に貿易を再開できる環境をつくりたい」と表明しました。

 小泉首相はブッシュ米大統領に「米国の意見は外圧とは考えない」と表明したことがあります。首相就任後初の日米首脳会談(二〇〇一年六月三十日、ワシントン)でのことです。

 「(日本は)従来は外圧で変化した。現在は内部の力で変革をしていく」とのべた首相は「不良債権の問題は米国の意見も聞いて成功させたい」と約束しました。ブッシュ大統領が森前首相に日本の不良債権の早期処理を迫った経緯があったからです。

 振り返ると、小泉首相はことあるごとにブッシュ大統領のチェックを受けてきました。

 「構造改革はどうなっているか」と大統領。「順調に進んでいる。不良債権も近いうちに処理を加速させたい」と答える首相(〇二年九月十二日、ニューヨーク)。

 「郵政民営化の進展ぶりはどうか」と大統領。「大きな反対はあるが、しっかりやっていきたい」と首相(〇四年九月二十一日、ニューヨーク)。

 同会談では、日米間の牛肉貿易の早期再開の重要性で一致し、事務レベルで具体的事項を速やかに協議することを確認したとも発表されました。

米業界動く

 「どうぞビジネスチャンスにしてください」と竹中平蔵経済財政担当相がエールを送ったように、不良債権処理問題では米国系投資会社が動きました。郵政民営化では米国の金融機関、牛肉問題では米畜産業界の強い働きかけが続いています。

 米国あっての日本経済という議論は、北米で利益を稼ぎ出す自動車産業などの論理です。米国の圧力で、食の安全や日本経済のかじ取りがゆがめられるようなことがあってはなりません。(つづく)


<ポイント>

 (1)米国政府は日本政府に米国産牛肉の早期輸入再開を繰り返し迫る

 (2)ブッシュ大統領は不良債権処理や郵政民営化でも小泉首相をチェック

 (3)米国あっての日本経済という議論は、北米で稼ぐ自動車産業らの論理


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