2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」

上瀬谷訴訟 米軍基地返還認めず

東京高裁 原告地主は上告へ


 神奈川県の遊休化した米海軍・上瀬谷基地(横浜市瀬谷区、旭区、二百四十二ヘクタール)に土地を持つ森茂徳さん(63)=瀬谷区=が、国とアメリカを相手に、土地の明け渡しを求めた裁判の控訴審判決が二十三日、東京高裁(宮ア公男裁判長)でありました。一審の横浜地裁判決の取り消しを求めた原告側の控訴を棄却する不当な判決で、森さんは、上告してたたかう決意を表明しました。

 裁判は、アンテナ群が次々と撤去され、部隊の解散・移転も進み、遊休化が明白になった上瀬谷基地について、米軍と日本政府が返還の努力を怠ったことは、遊休基地の無条件返還を取り決めた日米地位協定第二条三項に反するとして森さんが提訴(一九九八年三月)したものです。

 判決は、基地の必要性を判断する権限は、第一次的にアメリカにあるとした一審判決(二〇〇二年八月)を引き継ぎ、通信施設として使用が終了した場合には土地は返還されるべきだとした森さんの主張は「認めることができない」と退けました。

 また、一昨年来の日米両政府間の協議の結果、上瀬谷基地の全面返還の方向が合意されたことにふれ、国は森さんとの土地の賃貸借契約で返還問題を放置しているとはいえないとし、義務違反を理由とした森さんの契約解除の主張を認めませんでした。

 森さんは「不当な判決で許せない。独立国なら遊休基地の返還をアメリカに求めるべきだ」と怒りをぶつけ、原告側弁護団の木村和夫団長も「判決は対米従属一辺倒の日本政府に追随する裁判所の悪い側面を示したもの」と批判しました。

 一方、防衛施設庁の山崎信之郎総務部長は「妥当な判断が示された」とコメントしました。


解説

“遊休化”目そむける判決

 米軍上瀬谷基地土地返還訴訟の東京高裁判決は、基地が実態として遊休化している事実から目をそむけ、米軍が返還しない限りは、地権者は土地の返還を受けられないという、とても独立国の司法とは思えないような不当な判断を示しました。

 一審の横浜地裁は、上瀬谷基地の現地を検証(二〇〇一年六月)し、森さんの土地を米軍は「使用していない」状態だと認めながら、判決では、アメリカに迎合し、基地の必要性を判断する権限は「第一次的に米国に留保されている」と強調。米軍が「使っている」と言う限り、日本政府や地権者は「返還を受けることはできない」とし、基地の使用終了に伴って土地の賃貸借契約が終了する「不確定期限」も「未だ(いまだ)到来していない」としました。

 高裁判決は、これをそのまま引き継ぎました。

 控訴審では、遊休基地について国が返還の努力を怠り、長期に返還されない場合に、地権者が土地の賃貸借契約を解除できるかどうかも大きな争点となりました。

 高裁判決は、この点でも森さんの契約解除の主張を退けました。

 これでは、アメリカが「使っている」と言う限りは、いつまでたっても基地は返還されないことになってしまいます。

 憲法で保障された地権者・国民の財産権をないがしろにし、遊休基地の無条件返還という地位協定の取り決めさえ無視して基地の居座りを容認した対米従属一辺倒の判決といわざるをえません。

 森さんと支援の人たちがこれに抗議し、上告してたたかうと表明したのは当然です。

 神奈川県では、米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間移転計画や原子力空母の横須賀配備計画、上瀬谷などの基地返還と抱き合わせで米海軍・池子住宅地区の横浜市側に米軍住宅七百戸を建設する計画など基地の再編強化の動きが激しさを増しています。

 今後、不当判決への怒りを込めた森さんのたたかい、基地強化に反対し、返還を迫る県民・自治体ぐるみの運動がますます重要になってきます。

 (神奈川県 岡田政彦)


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