2005年3月22日(火)「しんぶん赤旗」

職場介助者は私の「目」

配置助成期間のばして

視覚障害者が厚労省に要望


写真

パソコンで点字を入力する内田邦子さん

 民間企業で働く重度視覚障害者や重度四肢機能障害者が、より能力を発揮して働けるよう「職場介助者」を置く制度があります。障害者一人に介助者一人がつくというもので、事業主には配置費用の一部が助成されます。しかし、助成期間が十年のため、視覚障害者たちは、「期間の延長を」と厚生労働省に強く要望しています。川田博子)

 東京都足立区在住の内田邦子さん(54)は、無認可の点字印刷共同作業所「雑草の会」(荒川区)で働き始めて十二年。仕事は、点字の印刷や出版、カセットテープのダビングや発送などです。

 内田さんはいいます。

 「中途失明の私は、点字はもとより、パソコンもほんの少しできる程度でした。そんな私を助けてくれたのが職場介助者です」

生きる自信に

 点字印刷の仕事は、活字の原稿を、点字に翻訳することから始まります。点字には「ひらがな」しかないため、点訳では、職場介助者が活字を正確に音(おん)で読むことが求められます。表や図は、介助者が言葉に置き換えて、内田さんに伝えます。

 「難しい仕事もこなせるようになり、『とても仕事など…』と思っていた私にとって、生きる自信につながりました。働き続けてこられたのは、職場介助者の方との出会いと、これを実現する制度があったからです」

 点字の仕事以外にも事務を担うようになりました。請求、会計管理、郵便物の処理など、職場介助者の「目」を借りなければできない仕事が増えています。

 今年十一月で内田さんがこの制度を受けてから十年となり、助成がきれます。零細な「雑草の会」には、介助者を雇用するゆとりはありません。助成がきれれば、作業所の運営が継続できなくなる可能性もあります。

 内田さんは訴えます。

 「年月がたっても、私の目が見えるようにはなりませんから、職場介助者の必要性がなくなることはありません。視覚障害者は、障害者のなかでも雇用率が低く、重度者の雇用は困難という事情もあります。ぜひ職場介助者の配置の助成年限を延長してほしい」

零細企業多く

 全国視覚障害者雇用促進連絡会(略称・視障雇用連、田中章治会長)は、職場介助者制度の助成期間延長を再三、厚生労働省に要望してきました。日本盲人会連合(笹川吉彦会長)も期間延長を同省に求めています。

 視障雇用連の田中さんは強調します。「重度視覚障害者を雇用している多くは零細な事業所であり、独自に介助者の体制を確保することは困難です。重度視覚障害者の職域が非常に狭くなっている現状を踏まえるなら、視覚とか聴覚の感覚障害者に限った助成期間延長の特例を設けてもよいのではないでしょうか」


職場介助者制度

 職場介助者を配置または委嘱する事業主に、配置費用の一部が助成されます。助成金額は、配置の場合は一人月十五万円、委嘱は一人一回一万円・年百五十万円まで。助成期間は十年間。

 あんまマッサージ指圧、はり、きゅうの理療以外の職業に就く視覚障害者は、まだわずかです。事業主が申請しない企業もあります。職場介助者の配置・委嘱をしている企業は百三十社・三百五十八件。百二十三人の視覚障害者が対象となっています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp