2005年3月20日(日)「しんぶん赤旗」
米軍再編で自衛隊OB
“占領意識払しょく”言うが…
日米同盟の強化提言
「駐留軍とはいえ外国軍隊を六十年間受け入れている国はそうない。まして(在日米軍は)占領軍だった。その占領軍的体質が今までそのまま続いているのではないか」
今月上旬、都内で開かれた「米軍再編と日本の対応」と題するシンポジウムで、岡本智博・元自衛隊統合幕僚会議事務局長(元空将)からこんな発言が飛び出しました。
駐留60年の異常
シンポジウムは、「東京財団・国防政策戦略研究グループ」が一月にまとめた在日米軍再編に関する提言を報告するために開かれたもの。研究グループの委員十人中六人が自衛隊の元高級幹部です。シンポジウムには百人以上が集まりました。
シンポジウムで、委員の一人である岡本氏は「(米軍の)リアライメント(再編)をどう日本のために活用すべきか」と問いかけ、「われわれは(米軍に)占領されているという認識を払しょくしなければならない」と強調しました。
ただ、その結論は米軍に撤退を求めるのではなく、「基地の(日米)共同使用と自衛隊による基地管理」(提言)を進めていくというもの。米軍専用基地を自衛隊との共同使用基地にすれば「(米軍の)占領軍としてのイメージが薄く」なり、「米軍の安定的、継続的駐留を可能にする」(同)というのです。
しかし、基地の共同使用の拡大は、政府内からもすでに「目くらましだ。それで基地がなくなり、負担が減るものではない」(高官)という批判が上がっています。
シンポジウムで研究グループ主査の坂本正弘・元経済企画審議官は、今回の米軍再編で「米軍はヨーロッパ、韓国から退くが、アジア太平洋はむしろ強化だ。特に日本の戦略的地位が高くなる」と指摘しました。
こうした認識から、提言は「米軍の再編を契機に、日米同盟を再定義・強化せよ」と提起。「日米同盟の役割を日本の防衛にとどまらず、アジア・太平洋地域の安定、世界の安全保障の要へと再定義し直す必要がある」とし、実態として進んできた日米軍事同盟の地球規模化を明確にすることを要求しています。
同時に「同盟・友邦国の活用」を狙う米軍の再編は「自衛隊変革推進の好機」だとし、「米軍との相互運用性を高め、共同作戦能力を強化せよ」と提案。さらには政府の新「防衛計画の大綱」は「専守防衛政策の呪縛(じゅばく)から逃れていない」とし、「策源地攻撃能力の導入」=海外の敵基地への攻撃能力の保有まで求めています。
中国脅威口実に
提言がこれらの口実にしているのが「中国の脅威」です。
シンポジウムで坂本氏は「中国の脅威は、アメリカは公式には言わないが、私が回った印象では、アメリカを脅かすものとして非常に重要になってきているという認識がある」と指摘しました。
提言は「台湾海峡問題」や「西太平洋全域にわたる中国の台頭への対応」で「(日本の)応分の役割分担が必須」と強調。「有事の際の後方支援とともに、作戦支援まで踏み込まざるを得ない」として「集団的自衛権の行使を認める必要がある」と強調しています。
米国の「中国脅威」論に追随し、それへの対処で自衛隊が米軍とともに武力行使できるようにせよという主張で、アジアに新たな軍事緊張を生み出すものです。
研究グループは提言公表後、大野功統防衛庁長官、細田博之官房長官、安倍晋三自民党幹事長代理に説明。米側にも提言の英文を渡すなど働きかけを始めています。
(田中一郎)