2005年3月15日(火)「しんぶん赤旗」

関電、責任の自覚不足

美浜原発事故最終報告案


 関西電力美浜原子力発電所3号機(福井県美浜町)の二次系配管が破断し、十一人が死傷した蒸気噴出事故で、経済産業省原子力安全・保安院は十四日、関電が同配管の適切な管理を行っていたとは言えず、事業者としての責任の自覚が不足していたなどとする最終報告書案をまとめました。

 最終報告書案はこの日、福井市で開かれた事故調査委員会で報告されました。


解説

経営優先が招いた事故

 事故調査委員会の最終報告書案は、関西電力が原発の管理・運転にあたって安全より経営を優先してきたことをあらためて浮き彫りにしています。

 事故後、国の原子力・安全保安院は、関西電力の保守管理の実態を調査しました。報告書案は、その結果、関西電力では配管減肉調査をおこなって技術基準を下回ることが判明した場合でも、原発の運転再開が遅れるおそれがあるとして、技術基準を独自に解釈し補修を先送りしてきたことが判明したとのべています。

 関西電力の資料をもとに原子力・安全保安院が集計したところ、補修しなければならなかったのにしなかった件数が、一九九七年度に二十四件と、それまでの数件から急激に増えています。一九九一年度から一九九六年度まで、関西電力の設備利用率の平均は全国平均を下回っていましたが、この年84・1%となり全国平均を上回りました。安全軽視の姿勢が、いかに経営に貢献するか、この事実が物語っています。

 関西電力に限らず電力会社は、原発の定期検査の期間をできるだけ短くしようとしています。美浜原発3号機は営業運転開始から三十年近くたった「老朽原発」です。このような原発で、安全より経営を優先した管理・運転がおこなわれればどうなるか、今回の事故ははっきり示しました。

 ただでさえ、さまざまな危険性が指摘される原発が、このようにいいかげんな点検ですまされているのでは、そこで働く労働者と周辺住民は不安でたまりません。原発の推進機関と規制機関が一体化したいまのようなやり方でなく、独立した強力な規制機関の確立が求められています。

 (間宮利夫)


国の責任棚上げに

 日本共産党の吉井英勝衆院議員の話 経済産業省原子力安全・保安院の最終報告書案が関西電力や三菱重工業の責任を問うているのは当然です。しかし、国の責任棚上げは、この間の経過からいっても許せません。

 関西電力は、この十年間、毎年のように「定期安全レビュー報告書」を国に提出しています。その中で、一九八六年に起こったアメリカのサリー原発事故の原因について今回と同じ「配管の減肉であった」としたうえで、「日本では一九七五年から計画的に肉厚測定を行っており、検査したが問題になる減肉はなかった」と事実と異なる記載をしています。

 国は、事故が起こるまでそれを見抜けず「妥当なもの」と認めてきました。国の関西電力に対する管理・指導責任はきわめて重大といわなければなりません。

 昨年九月、美浜原発の元所長は、破損した配管について「技術者は減肉が起こることを知っており、当然、点検しているものと思いこんでいた」と語りました。「思いこみ」で検査個所として登録されていないことが見逃され、国もそれをチェックできなかった。国の検査体制の弱体化もたいへん心配です。


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