2005年3月13日(日)「しんぶん赤旗」

米がイランに「見返り」

核放棄ならWTO加盟容認

当面、欧州と協調


 【ワシントン=浜谷浩司】ライス米国務長官は十一日声明を発表、核開発放棄を求めイランと交渉している英国、仏、独三カ国に歩調を合わせるため、米政権が、当面これまでの強硬一本やりからイランに経済的「見返り」を与える方針に切り替えたことを表明しました。

 同長官は、このなかで「欧州三カ国への支持」を再三強調するとともに「米政策の転換ではない」とも述べ、今回の方針があくまで欧州との協調を主眼にしたものだとしています。

 同長官は声明で、平和的外交的手段でイランに義務を果たさせようとする欧州の立場を「支持する」とし、イラン側の行動こそ問われていると主張。イランの「人権と民主主義の侵害」や「テロ支援」でも「欧州と懸念をともにする」とし、とりわけパレスチナの「暴力集団への支持をやめなければならない」と強調しています。

 米国のイランへの敵対姿勢は、欧州の対イラン交渉の障害になってきたことから、今回の米国の措置で交渉進展の可能性が若干は広がったことになります。

 同時にブッシュ政権は、イランがウラン濃縮を含む核開発を放棄する可能性はきわめて低いとみており、欧州諸国の対イラン交渉が不調に終われば、制裁のため六月にも国連安全保障理事会に問題を付託する構えです。

 ライス長官はロイター通信とのインタビューで、交渉決裂の場合に欧州が制裁に同意することに「自信がある」と述べました。

 米政権にとって今回の方針は、イラク侵攻をめぐって欧州と厳しく対立し痛手を受けた経験から、安保理での欧州の協力を確保しようとするものだといえます。

 ライス長官は十一日の声明で、イランの世界貿易機関(WTO)加盟申請に対する反対を取り下げ、イラン民間機の修理用部品供与の可否を個別に検討するとしました。

 これらは核開発に「見返りを与えない」としてきた政策からの譲歩を象徴するものの、WTO加盟には数年にわたる交渉が必要であることなどから、今回の措置の実質的な意味合いは小さいといえます。


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