2005年3月12日(土)「しんぶん赤旗」

ワールドリポート

マイケル裁判と米社会

後絶たない児童虐待事件

「100万人が被害」との調査も


 ポップ・ミュージック界のスーパースター、マイケル・ジャクソン(46)が児童虐待の罪に問われている裁判が、二月二十八日からカリフォルニア州サンタマリアの地方裁判所で始まっています。メディアは連日、裁判を詳しく伝え、全米の注目を集めていますが、裁判を通じ、米社会の様相も映し出されています。

 (ワシントン=山崎伸治)


 マイケル・ジャクソン被告は、一九六九年、十一歳の時に兄弟グループ「ジャクソン5(ファイブ)」で歌手デビューし、八二年の「スリラー」の大ヒットで世界的な人気を獲得。米国では「ポップの王様」と呼ばれ、エルビス・プレスリー、フランク・シナトラ、ビートルズと並び称されています。

 その一方、広大な敷地を持つ自宅を「ネバーランド」という遊園地にし少年たちと生活するとか、数回にわたって自らの顔を整形するなど、話題となってきました。それだけに、裁判でこのスターの真の姿が明らかになるかもしれないと、大きな関心が寄せられています。

ドラマで再現

 元プロフットボールのスーパースター、シンプソンが、妻と友人を殺害した容疑で裁かれた一九九五年の裁判では、八カ月にわたって法廷の模様がCNNテレビで生中継されました。

 ジャクソン裁判では、メルビル裁判長が法廷内へのテレビカメラの持ち込みを拒否しています。それでも連日、法廷入りするジャクソン被告の姿をカメラが追います。

 エンターテインメント専門の米ケーブルテレビ「E! エンターテインメント・ネットワーク」は、「そっくりさん」の俳優を使って、毎日の法廷の様子をドラマで再現し専門家が解説。報道ぶりも過熱しています。

人種間の対立

 このように注目されているジャクソン裁判ですが、米社会の深刻な問題も浮き彫りにしています。

 その一つが児童虐待です。ジャクソン被告は今回の裁判で、十三歳(当時)の少年にアルコール飲料を飲ませ、性的な虐待を加えたと訴えられています。

 米国小児医学会によると、九六年の調査で約百万人の米国の児童が虐待を受け、そのうち性的虐待は9%とされています。別の調査では、毎年1%の児童が性的虐待を受けており、十八歳までに12%から25%の女子、8%から10%の男子が被害にあっているとされています。

 米国小児医学会は九一年、児童擁護の指針をつくり児童虐待の根絶を呼びかけましたが、児童を狙った犯罪はあとを絶ちません。ジャクソン裁判の合間にも、フロリダ州で行方不明になった九歳の少女の消息をたずねる両親のニュースが流れています。

 同時に、今回の裁判でも人種間の対立が指摘されています。

 米世論調査会社ギャロップ社などが二月に行った世論調査によると、「マイケル・ジャクソンの罪状は真実かどうか」という質問に、白人ではイエスが75%、ノーが14%だったのに対し、アフリカ系ではイエスが51%、ノーが42%でした。人種間の認識の差は歴然です。

 ジャクソン裁判の十二人の陪審員は、八人が白人、四人がヒスパニック(スペイン語系住民)という構成です。

 これについて黒人人権運動家のジェシー・ジャクソン師は「アフリカ系米国人が一人も陪審員に選ばれていないことに対しては、法廷の果たすべき役割に当然の疑問がわき起こる」と批判しています。


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