2005年3月10日(木)「しんぶん赤旗」
地下鉄サリン事件10年
被害者救済へ行事計画
心の傷越え現場へ
![]() 地下鉄サリン事件から10年にあたって記者会見する被害者の会の高橋シズヱ代表世話人(右)と同被害対策弁護団の中村裕二弁護士(左)=9日、東京・霞が関の司法記者クラブ |
死者十二人、五千五百人を超す重軽傷者をだした地下鉄サリン事件から二十日で、まる十年。被害者たちは、無差別テロ被害をなくすためにメモリアル・ウオーキングや「十年の集い」に取り組みます。九日、地下鉄サリン事件被害者の会(高橋シズヱ代表世話人)、同被害対策弁護団、NPO法人「リカバリー・サポートセンター」(R・S・C)が記者会見して明らかにしたもの。
ウオーキングは、被害者の健康診断などで救済活動をしてきたR・S・Cの呼びかけで、十九日午前十時半、地下鉄日比谷線小伝馬町駅を出発し、霞ケ関駅まで歩きます。犠牲者の出た小伝馬町、八丁堀、霞ケ関、神谷町の各駅で献花し、後遺症に苦しむ心のケアと国による犯罪被害者救済の充実を訴えます。
R・S・Cの磯貝陽悟事務局長は「被害者は十年たっても地下鉄の入り口を見ることも出来ない心の傷を抱えてあがき、苦しんでいます。こうした後遺症をなんとか乗り越えようと企画しました。専門医も治療を兼ねて歩くことはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の回復にもプラスになるということから勇気をもって歩くことにしました」と話しています。
同日午後一時からは東京・内幸町のプレスセンターホールで、市民集会「あれから10年 地下鉄サリン被害者は今」(同集会実行委主催)を開きます。第一部で、米国から「9・11テロ」の被害者が来日し、米国と日本の犯罪被害対策を比較し問題点を検討。第二部は、「今、サリン被害者に必要なこと―国は何をすべきか」をテーマに討論します。治療に当たってきた医師や被害者救済に取り組む弁護士などが発言します。
後遺症、恐怖心 いまも
「体が疲れやすい」(56%)、「目が疲れやすい」(75%)、「眠れない」(24%)――。「リカバリー・サポートセンター」(R・S・C)の検診とアンケート結果で、被害者に今なお後遺症と苦痛が軽減することなく続いていることがわかりました。
昨年十月、百三十九人の被害者に直接問診を行った結果と、アンケートに答えた百八十七人の計三百二十六人の調査によるものです。
「頭痛がする」45%、「体がだるい」43%、「めまいがする」31%などの症状を訴えているほか、「現場に近づけない」19%、「事件をありありと思い出す」などPTSDに苦しんでいます。
検診は一九九六年から毎年一回実施。昨年十月で九回、のべ千五百四十人が検診をうけました。この十年間一貫して、頭痛を訴える被害者は40―60%、「目が疲れやすい」「焦点が合わない」など眼科的症状を訴える被害者65―75%と高い割合が続いています。
磯貝陽悟R・S・C事務局長は「特効薬も、治療法もなく被害に苦しんでいます。本来、国や自治体が調査、検診、後遺症ケアを行う必要がある」と話しています。


