2005年3月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

後発医薬品 安い薬 採用増える


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後発医薬品の採用にとりくむ川久保病院の薬剤科=盛岡市

 後発医薬品(いわゆるジェネリック)の利用が少しずつ広がっています。新薬(先発品)と薬効が同じで、評価が定まり価格が安いため、「医療費を抑える」と期待されているもの。医療関係者の運動や日本共産党の国会質問などもあり、厚生労働省が使用促進の施策を講じてきたことが影響しています。岩手県と北海道から、その現状と取り組みを紹介します。

年4億5千万円を節約

半額近くになる患者も

岩手県立病院

 北海道庁が各都道府県立病院の後発医薬品の採用状況を調査したところ、岩手県がもっとも多く採用していました。

 「確かに高いといえば高いが、実態はまだまだです。うちは県立病院が二十七カ所もあり、医療財政の厳しさからみて、もっと採用をすすめたい」というのは岩手県医療局業務課の渡邊誠さん。

 同県では、本格導入前の二〇〇二年度、後発品使用は二百十四品目で全使用品目の7・21%でした。それが〇三年度は四百十五品目12・9%に、〇四年度はまだ途中ですが13・7%に広がっています。

 採用の方法は、後発品が厚生労働省の保険薬価に登録されたら、まず医療局のワーキンググループで情報を集め、品質や安全性をくわしく分析します。同一の薬効の薬に、いくつもの後発品が出る場合もあり、そのままでは現場での選択が大変なため、対応する一銘柄を決定。「各病院にその採用を検討してもらう」のです。

 病院では、医師や薬剤師、看護師、事務職などで構成する薬事委員会で検討、採用を決めます。

表

県の役割大きい

 後発医薬品の導入、採用を県議会で繰り返し取り上げてきた日本共産党の斉藤信県議は、「後発品が増えると一番は患者が助かる。医療費全体も減らせる。県立病院の薬剤一括購入をやっている県の役割も大きい」といいます。

 同県の〇三年度の後発品利用実績は四百十五品目、五億五千七百万円ですが、「これが全部先発品のままだったら、年間で約四億五千万円は上乗せになる」と渡邊さん。患者負担分(三割)では一億三千五百万円が軽くなっている計算です。

 島田文彦業務医事担当課長は「日本はもっと薬価を下げ、技術料を厚くするのが本来の姿。後発品を使う流れはますます増える」と期待します。

かかりやすく

 民間病院でも後発品の採用が進んでいます。

 盛岡市津志田にある盛岡医療生協・川久保病院では、十五―二十年前から後発品採用に取り組んでいます。駒井みどり薬剤科長は「とくに四―五年前から増えています。毎月二―三品目、年間十品目以上は後発品に変えている」と話します。

 同病院で採用している医薬品は七百二十三品目。そのうち九十二品目(12・7%)が後発品です。薬をのんでから吸収されるまでの薬のデータを後発品メーカーが出せるかどうか、製剤技術はどうかなどを薬事委員会で検証し採用を決めます。

 高血圧治療で一日三種類の薬を各一錠のんでいるある患者の場合、負担(三割)は、先発薬を使うと月二千四百十二円に対し後発品では千三百二十九円で、千八十三円安くなります。年間では一万三千円にもなります。

 駒井さんは「とくに慢性疾患の人は影響が大きいんです。いま医療改悪で患者負担が増やされていますから、薬剤費を下げ医療にかかりやすくするのは、患者の受療権を守るためにも欠かせないこと」と力を込めます。


切替え訴え2年で倍加

日本共産党北海道議 大橋 晃

 後発医薬品の使用促進は、日本共産党道議団が系統的に取り組んできた問題の一つです。

 二〇〇二年八月の企業会計決算特別委員会で、萩原信宏議員(当時)が道立病院の後発品問題を初めて取り上げました。

 道は、道立病院での後発品の使用が〇一年度で品目で3・59%にすぎないこと、後発品のある六十一品目をすべて後発品に切り替えた場合、医薬材料費が約一億五千万円節減が図られるとの試算を明らかにしました。

 〇二年十月の予算特別委員会では、私が札幌医大病院における後発医薬品使用促進を取り上げ、大学で研修した医師が都市や地方の病院に出ていくことから、大学における使用促進が波及効果を持つことをあげ、使用促進を要求しました。

 大学当局は、後発医薬品の使用率が3・73%で、公立医大の平均3・75%より低いことを明らかにし、さらに促進に努めると答弁しました。

 昨年十一月の決算特別委員会で、私が再度道立病院における後発医薬品について質問しました。

 道は〇三年度で後発医薬品の使用が、品目で7・4%、金額で4・8%になり、〇一年度と比べてそれぞれ約二倍、約三倍になったことを明らかにし、後発医薬品の使用で約三千百万円の医療費節減効果があったことも明らかにしました。

 後発品は、一部に副作用情報が得にくい、また診療現場では薬が変わることに伴う煩雑さがあることは、医師として私も経験しているところですが、まだまだ使用率を上げることは可能です。

 なによりも患者負担を軽減できること、医薬材料費の割合を下げ経営改善に資すること、そして総医療費抑制につながるなど、まさに「一石三鳥」です。引き続き取り組みを強める決意です。(党道議団長)


医療費の値上げは不要

共産党が国会で追及

 日本の薬価は、欧米に比べ一・五〜三倍とかなり高いのが実態です。

 その大きな要因が、新薬が大量に使われていること(ドイツ約10%、日本約50%)です。

 日本共産党は、新薬偏重の高薬価構造にメスを入れれば、繰り返される医療費値上げなどで国民に犠牲を押しつけなくて済むと提案。一九九七年に不破哲三委員長(当時)、志位和夫書記局長(同)が国会で取り上げ、国会、地方議会で繰り返し要求してきました。

 二〇〇二年六月に児玉健次前衆院議員が、国立病院での後発品への切り替え促進を要求したのに対し、坂口力厚労相(当時)は、「全部変えたら一兆円違うという話もある。努力しなければならない」と答弁。その後厚労省は国立病院へ「新薬偏重の見直し」「後発医薬品使用の促進」通知を出し、採用が広がりました。


 後発医薬品(ジェネリック)新薬(先発品)の特許が切れた後に、同じ成分でつくられる医薬品。ジェネリックは「一般的」などの意味。先発品と同等の効果と安全性などを証明し、厚生労働省の基準に合格すると製造承認されます。開発費が必要ない分、安価で、薬価も先発品の四―八割。欧米では数量で50%近くを占めていますが、日本では10%程度です。


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