2005年3月7日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

私たちが 「平和」を考える理由

フランスから3・1ビキニデーに参加

核兵器のことは、学校では教えてくれない


 今から五十一年前の三月一日、マグロ漁船「第五福竜丸」などが太平洋のマーシャル諸島ビキニ環礁で米国の水爆実験により被ばく、同船無線長だった久保山愛吉さんが死亡しました。この日を核兵器廃絶運動の出発点とし、毎年行われている3・1ビキニデーに参加するためフランスから二人の青年が来日。平和運動団体「フランス平和運動」のメンバー、フランソワ・ガニエールさん(22)とソフィー・レフィーズさん(27)です。二人にインタビューしました。(聞き手 山田芳進)

 ―平和活動を始めたきっかけは?

 フランソワ 二〇〇一年の9・11テロをテレビで見て、どうしてこんなことが起きたのか? そう考えていたとき、地元で「平和運動」主催の集会に参加したのがきっかけ。

 ソフィー 私は大学で「紛争の管理(国内・外の紛争終結、その後の平和構築の方法を扱う学問)」を専攻したの。卒業後はまったく違う仕事をしていたけど、やりがいを感じずに辞めました。一年ほど前、自分が身につけたことを生かせる仕事はないかと探しているときに「平和運動」に出会い、職業として始めて三カ月余りです。

 ―それまで、平和や核兵器の問題について考えたことはありましたか?

 二人 (口をそろえて)全然! 平和のことも核兵器のことも、学校では全然教えてくれなかった。

ダイナミックに

 ―活動で心がけていることは?

 ソフィー 私は物事をただ「分析」するだけでは物足りないし、実際に行動を起こしてそれが(良くても悪くても)結果として現れる活動が好き。それは今の若者に共通しているんじゃないかしら。

 フランソワ その点で、「平和運動」はダイナミックな活動ができるところだね。

 ソフィー 例えばフランス南部のイストル空軍基地には核兵器貯蔵施設があって、そのことによる環境被害の可能性を追及すると、軍司令官は「じゃあ市民で構成される調査委員会にあなた方も入って調べてください」って。あっさり過ぎて意外だったけど(笑い)。

 フランソワ 人と話すとき、「フランスは核兵器関連の予算として毎時間百五十二万ユーロ(約二億一千万円)も使っているんだ。その分を教育や環境のために使えばどうだろう」と言うと分かってもらえたりする。

 ―「平和運動」が力を入れているのが「平和の文化」を育てる運動ですね。

 フランソワ 僕が中・高生のときもそうだったけど、学校では平和に関する教育がまったく行われない。だから平和を考えるきっかけにと、教育省が推進している「新聞週間」を利用して、僕たちの雑誌『平和な地球』を学校で読んでもらおうと一万六千校に贈ったら、六千校が購読してくれたんだ。

 ソフィー 劇団と協力して戦争を考える劇もやっているわ。そこにきたお客さんと対話することで、私たちの運動を理解してもらうの。

続けるのが大事

 ―活動の中でくじけたりするときは?

 フランソワ やっぱり集会に人が来ないとがっかりする。でもそこで止まっていたり、もういいや、ってやめてしまったら全部終わり。続けること、それが一番大切だね。

 ソフィー 奴隷制も対人地雷も情報を与え、みんながその不当性を理解するまで訴え続けることで廃止できる。一つのことを達成するのには本当に時間がかかるわ。

 最近、私の住むマルセイユと神戸との姉妹都市関係を中身のあるものに発展させようと思って、「非核神戸方式」導入の運動に協力してくれるよう市役所に申し入れたら、「あなた方に使う金も時間もない」って。本当にショックだったわ。でも神戸の人に「圧力」をかけてもらおうと思っているの!

 ―ご家族は二人の活動をどう思ってる?

 フランソワ 父は平和活動の「大義」は理解しているみたいだけど、「核兵器全廃」というのは「極端」だと思っている。

 ソフィー 母は私のことは理解してくれるけど、仕事を辞めたときはがっかりしてたわ。今は「最低賃金」だし。一月にポルトアレグレの世界社会フォーラムに行くって言ったときは「何それ?」って言われたわ(笑)。

 ―ところで、「平和運動」の会員数は?

 ソフィー 全国で四千人。青年は百人くらい。職業としているのは私を入れて七人よ。(大変だ!)

非核神戸方式

 神戸港に入港を求める外国軍船舶は、核兵器非搭載を証明する「非核証明書」を提出しなければならないとする取り決め。一九七五年神戸市議会が決議し、以来神戸港に米軍船舶は入港していない。


「過激」でない普通の青年

インタビューを終えて

 日本人が持つフランス人に対するイメージの一つとして、「ストやデモが好き」な「熱い」人たちというのがある。一般人でさえそうなのだから、「平和運動」にたずさわる2人はもっと「過激」なんじゃないか? 答えは「ノン」だった。学生になるまでは平和のことなど考えたこともない「普通」の青年だ。

 ソフィーもフランソワも「活動歴」は浅いのに、自分の考えをしっかり持ってさまざまな平和運動に取り組んでいる。達成すべき課題の大きさにひるんでいる様子もない。「続けることが大切」と、すでに運動の本質を見切っているかのようだ。

 広島で開かれる夏の平和大会に若者100人を連れてくると言う。「やってやる!」という熱さはないが、あっさり目標を達成したりして。


お悩みHunter

会社員に魅力感じず先生になりたいけど

 Q 将来、先生になりたいと思っています。ふつうの会社は使うもの、使われるものの関係がハッキリしていて、あまり魅力を感じないのですが、学校の先生だとクラスでは自由に教えられます。だから、先生になろうと思ったのですが、最近、先生も管理が厳しくなっているといいます。先生になろうという気持ちが少し揺らいでいます。(高校二年生、男性。長野県)

まず、動機を深めてほしい

  あなたがもし本当にそんな動機で教師を目指しているなら、悪いことは言いません。別の道を目指したほうがいいと思います。

 教師とは、通ってくる子どもたちの人生に何らかの影響を確実に与える職業です。自由に教えられるから、使うもの、使われるものがはっきりしていないから。そんな理由で教師となった人を、今、学生であるあなたは本当に信頼することができますか? 困ったときに頼ろうと思いますか? 少なくとも、おれはそうは思わないでしょう。

 風化した言葉のように感じるかもしれませんが、おれは教師とはやはり「聖職者」であると思っています。ただ、おれの考える「聖職者」という概念は、一般的なものとは少し違うかもしれませんが…。

 聖職者の「聖」とは教師を指すものではなく、子どもたちを指す。「聖なる存在と向き合い続ける者」、それがおれの考える聖職者、教師です。

 未来は人がつくる。そして人は教育がはぐくむ。教師とは、まさに未来に対する責任の一端を負わねばならない職業だとおれは思っています。もし、本当に教師を目指すならば、まずその動機を考え直し、深めてほしい。期待しています。

ヤンキー先生 義家 弘介さん 明治学院大学法学部卒。99年から母校北星学園余市高校教諭。テレビドラマになった「ヤンキー母校に帰る」の原作者。


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