2011年10月24日(月)「しんぶん赤旗」

米 軍事費抑制で攻防

ウォール街行動 削減世論広げる

議会 反対派の巻き返しも


 【ワシントン=小林俊哉】3年連続で1兆ドル(76兆5000億円)を超える大規模な財政赤字が続いている米国。財政再建策を協議している超党派の特別委員会では、軍事費も歳出カットの聖域ではありません。しかし、同委員会が検討している1兆ドルの軍事費抑制策には、抵抗する声が強まっています。

 オバマ大統領は今年4月、すでに今後10年間で4500億ドルの軍事費抑制を指示していました。国防総省内で具体案を検討中ですが、超党派特別委員会では、それを上回る1兆ドル規模の削減策がテーマとなっています。

政治状況一変

 同委員会はもともと、今年の夏の連邦債務上限の引き上げをめぐる与野党対立のなかで、国民生活分野の大幅歳出削減を求める野党・共和党の主張に配慮して、設置が決まったものです。

 しかし、財政再建のためには医療費や社会保障費の削減は当然といわんばかりの議論が強かった夏から、政治状況は一変。ウォール街への抗議行動が全米に広がるなかで、赤字を生んだ金融危機対策やイラク、アフガニスタンという二つの戦費の“ツケ”を国民に押し付けるのは反対だとする声が強まっています。「多くの予算専門家や社会施策の擁護者たちが、軍事費はもっと削れるだろうと主張している」(ニューヨーク・タイムズ紙)という状況です。

 事態を複雑にしているのは、この特別委員会が期限となる11月下旬までに削減策で合意できない場合、部門横断的に一律の歳出削減措置がスタートとする仕組みとなっていることです。軍事費については、一律削減額が6000億ドル規模にのぼると推定されています。

削減反対論も

 パネッタ国防長官は13日の下院軍事委員会で、“戦略的考慮”抜きの一律削減は「国防を破壊する」と主張。同時に、いっそうの削減にも否定的な姿勢を示しています。

 議会側も、削減反対の声を強めています。下院軍事委員会のマキーオン委員長(共和)は「急激な削減は、台湾やイスラエルといった同盟国への責任を果たす能力を損なう」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙14日付)などとして反対しています。

削る内容議論

 一方で、軍事専門家の間では、歳出削減は「避けられない現実」だとして、具体的に何を削るかについての議論が盛んです。特に、米国にとって比重が増すアジア・太平洋地域での米軍関与のあり方について、ブルッキングス研究所は17日にシンポジウムを開催。マイク・モチズキ・ジョージワシントン大教授は、沖縄の米軍基地移転に不必要に多額の金がかかっていることなどを挙げ、「戦略的考慮」を強めるときだと述べました。





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